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2016.08.10

地方創生の国交付金で撤退企業を救済か 7保育所等を統合し630人の「こども園」 大阪府阪南市 木村雅英(地方自治研究者)

阪南市(大阪府)が、すべての公立幼稚園(4園)と保育所(3所)を1か所に統廃合し、630人の認定こども園等を開設しようとしている。開設場所は大型家電量販店(ヤマダ電機)の空き店舗。国の地域再生戦略交付金(内閣府)で購入し、都市再構築戦略事業(国土交通省)でリフォームし、一般財源で定期借地料を肩代わりする。撤退企業の救済策とも言えそうだ。
計画の第1の特徴は、地域の公立保育所等を市内1か所に集中させること、しかも交通量の多い国道沿いに移転することにある。第2の特徴は、定員630人の大規模なこども園に変身させることにある。子どもの育ちと子育て支援からみて問題だ。
第3の特徴は、政府(内閣府・国土交通省)や与党(公明党)国会議員が深く関わり、しかも「地方創生」の国交付金だからこそ、空き店舗購入に使えることである。政府が地方自治体を振り回し、国交付金を撤退企業の救済に使うことは問題だ。
第4の特徴は、秘密裏に協議を進めたことだ。しかも保護者、市民の住民投票実施請求署名も一蹴して計画を推進している。民主的な市政の在り方として問題だ。
本稿が、保育所等の施設整備の在り方の検証、「地方創生」予算の使われ方の検証、「子育てしやすい地域づくり」の政策検討に資することを期待する。
2016.07.29

第31次地制調答申と地方独立行政法人-窓口業務の包括委託を中心に-村上博(広島修道大学教授)

地方独立行政法人に地方自治体の窓口業務を包括的に処理させること等を内容とする第31次地方制度調査会の「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」が2016年3月16日に出されました。この答申を踏まえ、総務省は
早ければ今年秋の臨時国会にも地方自治法等の改正法案を提出すると言われています。そこで答申の内容を概説し、地方独立行政法人問題について検討します。
2016.05.09

研究と報告109 指定管理76788施設に導入、指定取り消し等も2308件に 角田英昭

総務省は2016年3月、「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」(2015年4月1日現在)を公表した。この制度は、地方自治法の一部改正により2003年9月に施行され、その後3年間の経過措置を経て2006年9月から本格実施された。それに伴い総務省は2006年、2009年、2012年と3年ごとに導入状況調査を行い、その結果を公表してきた。今回の調査もそれに続くもので、その概要は下記の通りである。 
導入施設数は既に76,788施設になり、現在も増え続けている。最大の問題は、指定取り消し、業務停止、期間満了取り止め(以下「指定取り消し等」)が、今回の調査でも2.308件あり、制度の本格実施以来9年間で6.823件にもなっている。その結果、直営に戻すものもあるが、住民の福祉の向上を図るために設置された公の施設の多くが休止・廃止、民間譲渡等に追い込まれている。これは由々しき事態であり、適用施設の限定、制度の廃止をも含む抜本的な見直しが必要である。
2015.12.25

季刊 自治と分権 62号

「季刊・自治と分権」最新号ができあがりました。今号の特集は「地球環境を守る自治体政策」。COP21で歴史的合意「パリ協定」が採択された今、タイムリーな特集です。
 気候ネットワーク代表の浅岡美恵氏、自然エネルギー研究センター代表の大友詔雄氏、長崎大学准教授の中村修氏の論文で構成しています。どの論文も読み応えのある内容です。いつもより少し時間のある年末年始にじっくりお読みください。
 首長インタビューは宮崎県で最も人口が少ない西米良村の黒木定蔵村長。「うちの村は分母が小さいから分子が小さくても割った答えは大きい。小さい事業を3つ、4つ重ねて相乗効果を出せばいい」と逆転の発想で、村民が心豊かに暮らす「平成の桃源郷」をめざしています。
2015.10.01

季刊 自治と分権 61

「季刊・自治と分権」61号を発行しました。晴山一穂先生の随想「『全体の奉仕者』の淵源を求めて」は、「日本国憲法の制定過程に関心を抱き、関連する書物や資料を読みふけっている」という書き出しで始まります。その「きっかけは、公務員に関する憲法15条2項の『全体の奉仕者』規定はいったい誰が発案し、どのような過程を経て憲法に盛り込まれることになったのかを知りたいと思い立った」からだそうです。
 保母武彦先生は、「政府の『地方創生総合戦略』の基本認識は『地域の活性化で雇用の場をつくれば人が移動するという古びた考え』」と批判し、経済の豊かさではなく、「心の幸せ」「働き甲斐」「生き甲斐」を求めて若者がやってくる、海士町の事例などを紹介し、中山間地域の小規模自治体の「新しい人の流れ」に注目しています。
 桑田但馬先生は、岩手県の沿岸部および北部・西部における内発的な取組みを紹介。村上博氏は、自治体間の連携は、『中枢都市』に『近隣市町村』が事実上従属する上下関係ではなく、市町村と都道府県による二層制の地方自治保障の充実が求められると、広域連携の問題点と課題について論じています。
 首長インタビューは、市民主役のまちづくりに取り組む鹿内博青森市長。社会教育職場で働いた経験から、住民自治を重視し、自然保護など環境問題にも問題意識をもって取り組まれてきた様子が静かではあるけれど、情熱をもって語られています。
 大阪からの現場レポート、随想、ブックレビューなど、いずれも「平和憲法を持つこの国のあり方」を問うものとなっています。
2015.09.29

研究と報告108 地方版人口ビジョン&総合戦略の策定状況とその内容、課題 角田英昭(地方自治研究者)

政府は2014年12月に「まち・ひと・しごと創生法」に基づき人口減対策としての「長期ビジョン」と今後5カ年の総合戦略を策定し、関連予算・支援措置を決定した。これを受けて、各自治体は2015年度中に地方版総合戦略と人口ビジョンを策定する。
10月末までに策定した自治体には1団体当たり1000万円が交付される。8月14日の締切日までの申請状況は、都道府県が36団体(81%)、市区町村が698団体(40%)である。策定に向けては、既存の総合計画との整合性や人材・ノウハウの確保、重要業績評価指標の設定、PDCAサイクルの導入、効果検証等が求められ、民間シンクタンクへの丸投げや地域間格差の拡大も懸念されている。そのため政府は相談窓口の設定、人材支援、膨大なビッグデータの活用、細かな政策パッケージを示し、財政誘導も行って国の戦略・方針の徹底を図っている。
その中で、いま自治体の立ち位置、基本方針、進め方が問われている。大事なことは地域にしっかり根をおろし、住民、職員、議員、地元企業、研究者等の参加で地域挙げての計画、地域づくりを進めていくことである。政府はこうした自治体の自主的、自律的な取組を支援し、雇用や福祉、教育等で基盤整備を早急に行うべきである。全国市長会も今年5月、医療・教育はナショナルミニマムとして国が責任を持ち、子どもの医療費等は国が一律負担、無償化すべきと提言している。
ここではこうした現況を踏まえ、業界紙や一般マスコミ、自治体広報等に掲載された記事・情報等から、各自治体での地方版人口ビジョン、総合戦略の策定状況と検討内容、課題をまとめてみた。今後の活動に活かしていただければ幸いである。
なお、この問題は公共施設等総合管理計画や合併算定替廃止に伴う交付税減額等とも連動しており、これらも含めて総合的に検討していくことが必要である。