季刊 自治と分権

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No.86 /
2021.12

季刊 自治と分権 86号

 日本政府・財界は1980年代の臨調「行革」、2000年代からの「構造改革」において、国や自治体の公共サービスを縮小・民営化する政策を推し進めてきました。現在も「公的サービスの産業化」の名のもとに、公共サービスを民営化し、民間大企業の営利追求の対象に開放しています。一方で民営化は、サービスの質の低下、住民の人権保障機能の低下、企業との癒着、コスト増などの問題をもたらし、各地の自治体で直営に戻す動きも現れています。また日本政府が民営化の手本にしていたイギリスなど欧米諸国ではいま、労働組合・市民・研究団体の連携した取り組みで民営化された公共サービスを直営に戻す新しい動きが広がっています。
 本号では、公共サービスの民営化をめぐる現状と問題点を取り上げ、日本における公共サービスの再公営化に向けた課題と展望を考えます。

86号は、特集が「公共サービスの再公営化」。

 座談会では、榊原秀訓氏(南山大学教授)、尾林芳匡氏(弁護士)、高柳京子氏(自治労連副中央執行委員長)が、日本における公共サービス民営化の現状と問題点をとらえ、再公営化への課題と展望を語ります。特別インタビューでは、自治労連と交流のある英国・ユナイト労働組合の主任研究役員ジェームズ・ラズー氏が、なぜ民営化された公共サービスを自治体直営に戻す動きをつくりだせたのか、また労働組合が果たした役割などに答えてくれました。

 随想は黒田兼一氏(明治大学名誉教授)。自治体DXに伴う不安と危険性を指摘。「何の目的で、どのような個人情報をどのように集め、どのような手順で、どのように使うのか、透明性と納得性が不可欠である。ここにデジタル化と民主主義の両立の鍵がある」と。

 首長インタビューは、滋賀県近江八幡市・小西理市長。市立総合医療センターの直営化や子育て世代支援、行政のデジタル化に対する思いなどを語っていただきました。

 シリーズ自治の歴史と文化は、岐阜・宝暦の郡上一揆。和田昌三氏(郡上一揆の会会長)に、江戸時代に全国で起こった3200余件の百姓一揆の中でも、代表的な一揆として伝えられる宝暦の郡上一揆とその歴史的意義について執筆いただきました。

「季刊 自治と分権」86号の内容は下記のとおりです。

 

 1) 随想 「自治体DX、スマート・シティ、“落とし穴”」  黒田兼一(明治大学名誉教授)

 2) 首長インタビュー       滋賀県近江八幡市長  小西 理さん

                   インタビュアー    晴山一穂(福島大学・専修大学名誉教授

                                「自治と分権」編集委員) 

 3) 特集  公共サービスの再公営化

    ◎座談会 「産業化」から、憲法に基づく社会正義へ 転換の道を探る

        榊原秀訓(南山大学教授)、尾林芳匡(弁護士)、高柳京子(自治労連副中央執行委員長)

    ◎特別インタビュー 「公共サービスを直営に戻し、サービスの質と労働条件を改善する」

        ジェームズ・ラズー(英国・ユナイト労働組合 主任研究役員)

 4) 論文 

   「コロナ禍における地方自治・財政の諸問題と今後の展望」 

        平岡和久(立命館大学教授)

   「深刻化する貧困と、生活保護ケースワーカー業務の外部委託」 

        田川英信(生活保護問題対策全国会議事務局次長・元自治労連副中央執行委員長) 

 5) 現場レポート

   「小池都政による都立・公社病院の地方独法化の問題」

        木村文彦(東京都都庁関連法人一般労働組合書記長)

 6) 弁護団レポート 

   「大阪市労組の闘いと大阪地裁判決の意義 -大阪市・組合事務所団交拒否事件-」

        谷 真介(弁護士)

 7)  自治の歴史と文化 第7回 

   「宝暦の郡上一揆 -理不尽な増税に立ち上がった農民たち」 

        和田昌三(岐阜県 郡上一揆の会会長)

 8)  ブックレビュー

 9)  自治体日誌