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新着一覧

2022.06.23

研究と報告142 個人情報保護法の改正と自治体  本多滝夫(龍谷大学教授)

昨年(2021年)5月に、いわゆるデジタル改革関連法が成立しました。デジタル改革関連法といえば、デジタル庁の設置のことだと思う方も多いでしょう。デジタル改革関連法は、デジタル庁の設置を定めたデジタル庁設置法だけではなく、これからの日本社会のデジタル化を進めていくというデジタル社会形成基本法、デジタル社会の形成に関する施策を実施するために63本の法律を一括して改正するデジタル社会形成関係法律整備法、自治体の情報システムの標準化を進める地方公共団体情報システム標準化法など6法律から成っています。デジタル改革関連法が進めようとするデジタル社会の形成、いいかえれば社会全体のデジタル化とは、データを自由に流通させることと、自由に流通させたデータをシステム相互の間で連携させることを目指すものです。
2019.11.14

研究と報告 136  原発災害避難自治体の現況と復興、自治の課題 -2019年度自治体調査結果の概要- 角田英昭(自治体問題研究所)

 現在、東日本大震災・福島第1原子力発電所事故に伴い全域避難を余儀なくされた双葉郡各自治体の帰還と復興対策が進められています。置かれている条件、状況は異なりますが、どの自治体も帰還促進に向けた早期の復旧復興、地域再生、地域経済振興、避難者の生活支援、財政及び推進体制の確立、広域連携など多岐にわたる問題に取り組んでいます。しかし、帰還の現実は厳しく期待通りには進んでいません。
 こうした状況を踏まえて、自治体問題研究所と福島自治体問題研究所が2019年7月に双葉郡の原発災害避難自治体(浪江町、葛尾村、大熊町、双葉町)で行った調査からは、この地域の復興・復旧、帰還問題は、何よりも原発事故という特殊な問題に起因しており、それ故の厳しさがあること。また各町村、住民、関係者の努力により一歩一歩前進していますが、課題は多く、時間がかかることなどが明らかにされています。
2019.08.06

研究と報告 135  現代日本の地方財政と税源偏在問題  関野満夫(中央大学経済学部教授)

 近年、日本の地方財政では、安定的な地方税源を確保するという名目で地方消費税の増税が進んできた。その一方で、地方法人2税(法人事業税・法人住民税)については、地域的偏在性が大きく、かつ東京都への税収集中をもたらしている、という現実の中でやや複雑な偏在是正措置も取り入れられてきた。本稿では、現代日本の地方財政における税源偏在問題の実状を、東京都への地方法人税源の集中の背景にも注目して、整理がされています。
No.134 /
2019.06.26

研究と報告 134 2018年「指定管理者制度導入状況等調査」結果の概要と課題、今後の取組   角田 英昭(自治体問題研究所)

 公の施設の指定管理者制度が施行されてはや15年になります。総務省が2019年5月に公表した調査結果によれば、2018年4月現在76.268施設に導入されており、今回初めて減少に転じましたが、導入後の状況を見ると、それは「公の施設」のあり方、制度運営、当該の施設で働く人達、利用者・住民に大きな影響を及ぼし、制度の抜本的な見直しは緊急の課題になっています。
 本稿では、2018年「指定管理者制度導入状況等調査」の結果を踏まえて、改めて指定管理者制度の運用の実態と問題点、課題を明らかにしています。
2019.04.16

研究と報告133 文化財の保存から活用へ 現状と課題   泰井良(静岡県立美術館上席学芸員、美術史家)

 「アベノミクス」に象徴される政府の経済政策は、大企業や高額所得者を優遇し、労働者や国民の生活・福祉を軽視するものに他なりません。同様に、文化政策においても、政府は、「稼ぐ文化」に傾倒し、文化財の保存・継承よりも、活用を優先させるという偏った政策に舵を切ろうとしてます。
 本稿では、政府の主な文化政策の現状と課題を分析したうえで、今後の文化財及び文化政策、美術館・博物館は、どうあるべきかについて考察しています。
2019.01.29

研究と報告132 「平成30年7月西日本豪雨」による愛媛県内の被害状況と課題 高尾佳孝(愛媛労連副議長/自治労連愛媛県本部 執行委員長)

「平成30年7月西日本豪雨」による愛媛県内の被害状況を県内でも被害の特に大きかった大洲市・西予市・宇和島市の3市での、発生要因や被害内容さらには地域特性による課題などを詳しく説明。平成の大合併によって「市」の規模は大きくなる一方で、職員数は大きく削減。こうした状況で今回のような広域かつ大規模災害が発生した場合、避難誘導や避難所開設など、住民の命を守る基本的な対応に大きな課題があることが露呈。
職員は災害発生直後から極限状態で住民の命を守るために懸命に活動し続けましたが、それでも野村地区で5人の尊い命が失われてしまいました。
 本稿では、改めて本来あるべき自治体の役割と、それを担うだけの職員数について考える必要性と、もう一つの命の砦である医療体制の課題や、災害時におけるライフラインの確保、職員の確保の観点からも早急な対策の必要性を明らかにしています。
2018.12.17

研究と報告131 「平成30年7月豪雨災害」からの復旧4ヶ月―倉敷市真備地区を中心に(桒田但馬 岩手県立大学准教授)

 2018年7月、記録的な豪雨により、広域にわたって甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨災害」は各地で河川氾濫や土石流、流木などを引き起こし鉄路や、国道を含む道路を寸断、多くの死者、行方不明者など未曽有の被害をもたらしました。
 本稿では、発災から4ヶ月間で2度、真備地区を訪問し、現地の実態調査や被災者へのインタビュー調査などを行った筆者が、真備地区を中心に西日本豪雨災害から4ヶ月の復旧状況の実態を明らかにし、産業復旧に関する公的支援の当面の課題について考察しています
2018.11.26

研究と報告130 老人医療無料化発祥の地~旧沢内村(現・西和賀町)で、「いのちの灯」建立35周年の集いを開く(NPO法人「輝け『いのち』ネットワーク」 代表 高橋典成)

 1960年12月1日、岩手県旧沢内村が65歳以上の高齢者を対象に、老人医療費無料化を全国で初めて実施した。その後、全国の人たちの呼びかけで「老人医療費無料化発祥の地」を顕彰する記念碑「いのちの灯」が、1983年12月1日に沢内病院前庭に建立されました。
 本年、10月14日に開催された、建立35周年を記念する集いの報告を掲載します。
2018.08.21

研究と報告129 憲法は生きているか「沖縄のいま」-平和・環境・人権―憲法と自治のいきる島をめざして(おきなわ住民自治研究所 湧田廣)

 憲法施行から71年余、沖縄が日本復帰して46年経過した今日、沖縄はいま大きな転換点に立っています。
 今年、11月18日実施予定の沖縄知事選挙は、翁長知事の急逝(8月8日)を受けて、9月13日告示・30日投開票となりました。
 本稿では、沖縄をめぐる基地問題や地方自治について考察しています。
2018.07.24

研究と報告128 自治体戦略2040年構想研究会報告の概要と課題 角田英昭(自治体問題研究所)

 2017年10月に総務省に設置された自治体戦略2040構想研究会は、第1次報告(4月)、第2次報告(7月)を相次いで公表しました。
 研究会の戦略目標は、「人口縮減時代の新たな社会像の構築、基本施策の開発、自治体行政の大胆な書き換え」であり、市町村行政のフルセット主義からの脱却、スマート自治体への転換、「圏域」単位での行政の推進が目論まれています。
 本稿では報告書の問題点と課題、内容の検討、今後の取組みについて考察しています。
2018.06.26

研究と報告127 「堺市職員の政治的行為の制限に関する条例案」について、堺市議会における晴山一穂参考人(専修大学名誉教授)の発言と質疑 晴山一穂(専修大学名誉教授)

 2017年堺市議会第2回定例会において、堺市職員の政治的行為の制限に関する条例案が大阪維新の会の議員より提出され、翌年2月16日、堺市議会総務財政委員会での参考人質疑に、自治労連・地方自治問題研究機構運営委員の晴山一穂氏(専修大学名誉教授)が参考人として出席し、陳述しました。
 同条例案に関わる晴山氏の参考人発言と質疑に関わる箇所について、議事録より抜粋したものを掲載します。
2018.04.10

研究と報告126 翁長沖縄県知事によって具体化される地方自治 村上博(広島修道大学教授)

 辺野古新基地建設を巡る沖縄県と国との対立は、憲法を破壊しようとする安倍政治と憲法を守りいかそうとする翁長政治の対立です。翁長知事は「辺野古の問題は、沖縄県だけの問題ではありません。まさしく、地方自治の根幹に関わる問題であり、ひいては民主主義の根幹に関わる問題であります」と翁長知事は述べています。
 本稿は、辺野古基地訴訟において表明された翁長知事の発言を中心にして、日本国憲法が保障する地方自治の在り方を考察しています。