2013.08.20

トピックス TPPは東京都に1兆907億円など都市部にも大きな影響

TPPは東京都に1兆907億円など都市部にも大きな影響

全国約900名の大学教員が賛同人として名を連ねる「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」が、7月17日、都道府県別のより詳細なTPP影響試算を発表した。
試算によると、TPPの関税撤廃による農業生産の減少が加工・運搬など関連産業に及ぼす影響は、11兆6918億円の減少、全国の所得が1兆7692億円減少とする結果となった。
TPPは農業など地方の問題とされがちだが、雇用者所得の減少や家計消費支出の減少などにより都市部にも大きな影響がでることが明らかにされている。
都道府県別影響試算では、東京都1兆907億円、神奈川県2972億円、大阪府3729億円の損失となっている。(IWJ)
試算にあたった土居英二氏(静岡大名誉教授)が、農業生産額の減少と、それがもたらす雇用者所得減少や家計消費減少を最終段階まで算定した結果を発表。また1都道府県だけでなく、経済取引を通じた他の都道府県へ与える影響、他県などからの影響など「跳ね返り効果」も計測した。

試算では、例えば北海道の農林水産物等(※)の減少額は5241億円で、それに第二次・第三次産業への影響、他都県の生産減少の影響などを加えると、全産業への影響は1兆4390億円となる。東京都に至っては農林水産物等の減少額31億円に対し、全産業への影響は1兆907億円と、生産減少倍率は349.2倍となる。神奈川県も自県の生産減少額は173億円だが、他県の生産減少の影響で関連産業が2972億円減少(17.2倍)、大阪府も自県は93億円減少だが、他県の影響で関連産業3729億円減少(40.1倍)。農業生産減少は地域産業に平均3.7倍の影響を及ぼす。
(※)農林水産物等とは、食料加工品や林業・漁業などを加えたもの

また関税撤廃の所得への影響試算をみると、農家や企業、従業員の家計の所得は総額で、4兆2627億円減少する。政府がTPPのメリットとして強調する、物価低下による家計の負担軽減2兆4935億円を差し引いても、1兆7692億円となる。
自県の生産減少額の少ない東京都や神奈川県、大阪府などの「都市部」が、特に他県での減少の影響が大きくなったことについて土居名誉教授は「都市部は加工食品や肥料、農薬、運搬など関連産業が多いため、影響額が膨らんだ」と語り、「この点からも『TPP=地方の問題』というのは誤りで、むしろ『都市部』にも深刻な影響を及ぼす」と警鐘を鳴らした。

発表資料
●産業連関表を用いた都道府県別試算の結果の総括表
TPP 第3回記者発表資料(土居英二@静岡大学).PDF
TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
http://atpp.cocolog-nifty.com/blog/

参考

自治体の公共工事もねらうTPP

TPP協定では、政府調達についても作業部会が設けられており、当然その自由化についても取り決めがされると思われます。(注)
TPP協定の前身P4協定では政府調達にあたっては、自国の産品、サービスや供給者に与える待遇と他の協約国の産品、サービスや供給者に与える待遇に差を設けてはならないとしています。
これは地方自治体も同じです。地方自治体で行われる公共工事も国際入札基準が下げられ、従来国際的に開かなくても良かった入札をTPP協約国企業に開放しなければならないケースが多く出てくると思われます。
現在、都道府県、政令指定都市が調達する公共工事は、世界貿易機関(WTO)の政府調達協定にもとづいて、外国企業に開くものは契約額23億円以上が日本の基準になっています。
日本がTPPに参加すれば、現在の基準が大幅に引き下げられる可能性があります。(注)

ISDS条項の危険性

ISDS条項(投資家対国家の紛争解決条項)は、たとえば米国企業が日本の自治体の公共事業に進出をねらったところが、うまくいかず「不利益を蒙った」と判断した場合に、当該自治体を相手取って提訴できる仕組みのことで、多くの国際協定で仲裁機関に指定されているのが、世界銀行国際紛争処理センターです。
こうした国際的な訴訟で日本の自治体が勝利するのは非常に難しいとされています。
農業や医療だけではなく、都市部での影響も大きく、公共事業にも外資が入って地域経済も破壊されるようなTPP交渉からは即時撤退するべきです。

(自治労連 専門委員 今西 清)

注:TPPと労働者労働組合 萩原伸次郎 本の泉社
 

 TPP影響額