季刊 自治と分権

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No.57 /
2014.10

季刊 自治と分権 57号

首長インタビュー『保守王国で市民とともに市政転換』五位塚剛さん(鹿児島県曽於市長)
昨年7月21日、周囲の予想を裏切り、現職を破って曽於市長に当選した五位塚さん。保守色の強い土地柄の鹿児島県曽於市で何が起きたのか。そして、あれから1年、市政は今どうなっているのか。五位塚市長を訪ね、お話しを伺いました。
特集は、「自治体の市場化・民営化」です。

二宮厚美『公務の市場化・民営化路線に対する反撃視点』
現代日本の自治体では、いまあらゆる職場においてリストラ旋風が荒れ狂っている、といって過言ではない状況が広がっている。リストラのなかでも、特に公共部門を脅かしているのは、公務の市場化・民営化を意図した新自由主義的構造改革である。そこで、小論では、この「公務の市場化・民営化」の性格や構図、問題点を明らかにし、それに反撃していく視点を探ることにしたいと思う。(「はじめに」から)

久保貴裕『自治体の窓口業務の外部化と「限界」-足立区戸籍事務を例に』
自治体の窓口業務は、①住民の基本的人権を保障する、②住民と公共サービスを結ぶ総合相談窓口となる、③個人情報を適正に管理し、不正請求や犯罪を防止するなど重要な役割を担っています。政府は窓口業務の民間委託を拡大しようとしていますが、戸籍事務を民間委託した足立区では、戸籍法違反、偽装請負、サービス低下の問題を引き起こし、業務の一部を直営に戻しました。窓口業務は外部委託できる業務ではなく、自治体が直接責任をもって実施すべきです」(概要から)

竹田芳則『公立図書館の市場化-武雄市「TSUTAYA」図書館の何が問題か』
2013年4月に従来の武雄市図書館・歴史資料館をリニューアルオープンして誕生した「TSUTAYA図書館」は、初年度に100万人に迫る「来館者数」を誇り、「武雄モデル」として全国展開する勢いである。示されたTSUTAYA図書館化による「市民価値」とは、本来の図書館機能とは関係ない営業活動にすぎず、今後、公立図書館の公共性を破壊しかねない問題をもっている。(概要から)。武雄市「TSUTAYA図書館」を訪ね、実際に利用した結果も報告しています。

中山徹『人口減少社会の国土・まちづくり-「国土のグランドデザイン2050」を検証する』
安倍内閣は新たな国土計画を示した。これは人口減少を前提とした初めての国土計画である。しかし人口減少が進む中でいかに東京の国際競争力を維持するのか、地方では大幅な人口減少をどう乗り越えるのかという計画である。このような計画ではなく、地方の大幅な人口減少をどう防ぐのか、大都市部では人口減少を逆手にとり、日本の大都市が抱えている問題をどう解決するのかというような国土計画が望まれる。(概要から)

駒場忠親『民主的自治体労働者論の生成と今日的意義(前編)』
自治体労働運動に、公務労働がもつ二重性から生じる自治体行政の矛盾を、主権者である住民の視点に立って検証する新たな運動が生成したのは1950年代のことである。それから50年余を経た今日、あらためてその運動の持つ積極的意義が自治体労働運動の現場で語られている。本稿の趣旨は、民主的自治体労働者論とよばれる運動の創生から確立にいたる歴史をたどりながら今日的意義を考え、自治体労働運動の発展に資することにある。(「まえがき」から)

57号 目次
●特集「自治体の市場化・民営化」
* 公務の市場化・民営化路線に対する反撃視点 二宮厚美
* 社会保障制度改革と自治体病院 長友薫輝
* 自治体の窓口業務の外部化と「限界」-足立区戸籍事務を例に 久保貴裕
* 公立図書館の市場化-武雄市「TSUTAYA」図書館の何が問題か 竹田芳則

●論文
*ここから始める地域調査(下) 高山 新
*人口減少社会の国土・まちづくり-「国土のグランドデザイン2050」を検証する 中山徹
* 独立行政法人通則法の「改正」と地方独立行政法人への影響 平井哲史
* 民主的自治体労働者論の生成と今日的意義(前編) 駒田忠親

●シリーズ
* 自治体の非正規・公共関係労働者(最終回)学童保育指導員・及川春香さん 木村雅英
* 弁護団レポート 大阪における労働組合への便宜供与に対する攻撃とその闘い 谷真介

*ブックレビュー 永井和彦、鷲尾裕
* 自治体日誌(6月~8月)
* 編集後記