季刊 自治と分権

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No.88 /
2022.07

季刊 自治と分権 88号

 新型コロナ感染症で、国民の生活、雇用、中小業者の営業が困難に陥っています。国民の生活を保障するための様々な施策が国と自治体において検討、実施されています。しかし国民の生活保障の土台となる日本の生活保護基準は極めて低く、憲法25条に基づき、国民のくらしの実態をふまえた「健康で文化的な生活」の基準が定められなければなりません。一方で財界や新自由主義の立場からは、一定の現金一律給付だけで社会保障や教育を国民(住民)の自己責任におしつけようとする「日本型ベーシックインカム」が検討されています。このような動きの中で、憲法に基づく国民の生活・所得の保障とナショナルミニマムのあり方と国と自治体の責務について考えます。
『自治と分権』88号

87号は、特集が「生活保障-国・自治体の責務を問う」

 特集論文では、河合克義氏(明治学院大学名誉教授)が「健康で文化的な生活とは-憲法25条に基づく国と自治体の責務」、和田信也氏(弁護士)が、「国の違法な生活扶助基準の引き下げ-大阪地裁判決の意義とこれからの課題」、仲野浩司郎氏(羽曳野市こども家庭支援課/大阪公立大学非常勤講師)が、「コロナ禍における生活保護と生活困窮者自立支援事業」、二宮厚美氏(神戸大学名誉教授)が、「維新版ベーシック・インカムによる社会保障の積み木崩し」を執筆いただきました。それぞれの論稿がつながっていて読み応えのあるものに。

 随想は山口真美氏(弁護士)。ロシアによるウクライナ侵攻を、戦争を違法化してきた国際法の基本原則を破壊するものであって絶対に許されない。日本は今こそ平和憲法の精神に立ち返って、東アジアの一員として、9条を活かした平和外交で役割を発揮すべきと。

 首長インタビューは、東京都武蔵野市・松下玲子市長。憲法9条を守ることと、原発のない社会を実現することは、市民の利益に資するとの思いで発言をしていきたい。ウクライナに侵略するロシアのプーチン大統領に対しても、直ちに抗議文を送った。新型コロナの教訓も生かし、人権が守られ、「誰も取り残さない社会」をめざして、市民福祉の向上をめざしていると語っていただきました。

 論文では、清水雅彦氏(日本体育大学教授)に、「改憲をめぐる争点と改憲を阻止するための運動の課題」を執筆いただきました。昨年(2021年)の衆議院選挙後、憲法審査会では改憲派が改憲に向けて積極的に動いているが、改憲論議の前に憲法改正手続法自体の問題を解決する必要がある。自民党の本命は9条改憲であるが、自民党の9条改憲案は単に自衛隊を明記する「加憲」ではなく、海外で全面的な集団的自衛権行使可能な自衛隊にするという「壊憲」である。このような改憲を阻止するために、全国各地で本気の「労組と市民と野党の共闘」をつくる必要があると。

「季刊 自治と分権」88号の内容は下記のとおりです

 1) 随想  ロシアによるウクライナへの侵攻 ~9条を活かした平和外交こそ解決の道

     山口真実(弁護士・「自治と分権」編集委員)

 2) 首長インタビュー       東京都武蔵野市長 松下玲子さん

                  インタビュアー 永山利和(元・日本大学教授・「自治と分権」編集委員) 

 3) 特集  「生活保障-国・自治体の責務を問う」

    ●特集論文

   「健康で文化的な生活とは―憲法25条に基づく国と自治体の責務」

     河合克義(明治学院大学名誉教授)

   「国の違法な生活扶助基準の引き下げ―大阪地裁判決の意義とこれからの課題」

     和田信也(弁護士)

   「コロナ禍における生活保護と生活困窮者自立支援事業」

     仲野活司郎(羽曳野市こども家庭支援課・大阪公立大学非常勤講師・社会福祉士)

   「維新版ベーシックインカムによる社会保障の積み木崩し」

     二宮厚美(神戸大学名誉教授)

4) 論文

   「フランスの福祉事務所と生活保護―日本との比較から」 

     安發明子(フランス在住研究者・元横浜市ケースワーカー)

   「改憲をめぐる争点と改憲を阻止するための運動の課題」

     清水雅彦(日本体育大学教授)

5) 現場レポート

   「住民のためにいい仕事がしたい」自治体労働者の原点を感じて」

     竹村義明(京都府職労連書記長)

 6) 弁護団レポート

   「公安警察による個人情報の提供は違法―岐阜・大垣警察市民監視違事件」

     山田秀樹(弁護士)

 7)  自治の歴史と文化 第9回

   「小田県会への問い―独立自由ノ双眼ヲ開キ―」

     山下 洋 (倉敷市歴史資料整備室)

 8)  ブックレビュー

 9)  自治体日誌