研究と報告

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2012.06.22

「有期労働契約の新しい法案について」

根本 到(大阪市立大学教授)

この論考は、2012年5月13日に行われた自治労連・地方自治問題研究機構の第3回公務員制度改革検討会運営委員会で、根本到先生(大阪市立大学教授)の「報告」をテープで起こし、編集部が整理した原稿に、先生ご自身で手を入れていただいたものです。(編集部)

一 改正労働契約法の内容の検討
1 閣議決定に至るまで

それでは報告します。報告の対象は、労働契約法改正案の内容とポイントです。私のレジュメで言うと、「一」がそれに当たります。ただ、労働契約法は公務員には適用がないと定められていますので、それに留意して、この法案が公務にどういう影響を与える可能性があるかを「二」で採り上げます。
改正労働契約法の内容を考えるにあたり、それが提出されるまでの経過を確認しておきます。昨年末に労政審(労働政策審議会)の建議が出て、今年の2月に入ってから法律案要綱が出て、3月に法律案が閣議決定され国会に上程されています。4月から5月にかけて、情勢報告等で、もしかしたら緊急に可決されるかもしれないと言われていた時期もありますが、今のところ、可決されてはいません。

2 各団体の評価、意見

 法案については、各団体がいろいろな評価や意見をいくつか出しています。連合、全労連(全国労働組合総連合)、日本労働弁護団、日弁連等です。ここに挙げてありますが、これは、むしろ内容を見てからもう一度見たほうがいいと思います。1ページから4ページの終わりまで、だいぶ細かい内容をいろいろ指摘している日本労働弁護団の見解と、4月13日に出た日弁連の見解を挙げましたが、この内容は、あとで適宜触れるということにしたいと思います。

 

3 法案の内容と分析

 そのうえで、レジュメの5ページに行きます。法案の内容と分析です。今回の法案は、有期の規制にかかわり、大きく分けて三つのことを提起しています。
 一つ目は、「3-(1)」でとりあげていますが、利用期間が5年を超えたら無期転換の申し出をする権限を労働者に認めるというものです。ここでは、その内容を「無期転換規制(上限規制)」と呼んでいます。これにはクーリング期間が付いています。原則6カ月と示されていますが、6カ月の期間をおくと、通算する期間が一旦ゼロになるという規制があります。
 二つ目は、「3-(2)」でとりあげていますが、従前からあった判例法理である雇い止め法理を法定化しています。通常、判例法理を法定化すると、法状態が変わらないことが多いわけですが、法定化するだけで法状態が多少変わる可能性があります。そもそも、従前の判例をそのまま表現しきれているかも大きな問題になります。
 三つ目は、「3-(3)」でとりあげていますが、期間の定めを理由とする不合理な処遇を規制するということです。これは均等待遇差別規制につながるものです。今回、ここで問題にしているのは、有期で定めたことを理由として不合理な処遇をしてはならないという規制が問題とされています。
 この三点が今回の法案の大きな柱になっていますが、それぞれどう評価するか、少し述べたいと思います。

(1)無期転換規制(上限規制)の導入
 a)内容

最初の「無期転換規制(上限規制)」です。その内容は、「通算契約期間が5年を超える労働者が、期間の定めのない労働契約の締結の申し込みをしたときは、使用者は、これを承諾したものと見なす。その際の労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件とする」となっています。無期転換された場合でも、今まで結んでいた労働契約上の労働条件と基本的には変わらないというか、それを引き継ぐことが原則になっています。ただ、「別の定めがある場合は除く」という文言が入っています。
 有期労働契約については、諸外国にいくつか規制がありますが、有期契約は、むしろ自由に結べず、許された締結事由がある場合のみ認めるという規制の仕方をとっている国(締結事由規制)がある一方で、今回導入された無期転換規制、つまり上限規制を設けている国があり、大きく分けて二つに分類されます。今回の法案は、前者の締結事由規制(すなわち入り口規制)を採用しなかったことを意味しています。
 上限期間は、韓国は2年、イギリスは4年という規制を設けていましたが、今回の法案では5年という非常に長期の期間が設定されています。労政審等で合意する過程では、労働者側は3年から5年、使用者側は5年から10年を求めたところ、その間を取ったと言われています。しかし、事務方は、最初から5年を落としどころにしようと考えていたと思われる点があり、結果的にも5年になりました。
 また、上限規制は、一般に、5年を超えれば自動的に無期契約とみなす規制とすることが多いですが、今回は、労働者の申し込みを条件とした規制にしています。5年たって労働者が申し込めば、使用者が承諾したものとみなされるという、無期転換の申出権(形成権)を労働者に付与するというやり方を取っています。こうした規制を採用した場合にすぐに想像がつくのは、労働者側が申し込まなければ、無期契約に転換しないということです。労働者に申し込ませないようにすれば、実質的に脱法できることになります。
 さらに、申出権という方法を取ったため、その申出る時期を限定するという規制も設けています。具体的には、もし1年契約で4回更新して5年まで来たとして、次に申し出をしないでまた次の1年契約が始まると、今度はその次の1年契約の終了後にならないと申し出できないとなっています。
 次に、労働条件についてです。有期の身分の人と正規の人の労働条件が違っていた場合、契約期間の有無に関わって、無期契約に転換したら、むしろ正規の労働条件になるのが当然だといえますが、法律上の効果としては、今まで締結した労働契約の内容と同一の労働条件にするという方法を取っています。その会社での処遇の仕方にもよりますが、法律の力をもって、正規の人の労働条件になるとは限らないという定め方をしているわけです。
 もう一つ、今回はクーリング期間を設けてあります。一般に「クーリング期間」と呼ばれ、法律の文言上としては「空白期間」と書いてあるものです。有期の利用を続けていけば、それが通算され、5年を超えると無期転換申出権が発生するわけですが、空白期間をおくと、またゼロからカウントされることになります。このクーリング期間は、6カ月を原則とし、通算期間が1年未満の場合は、その2分の1に相当する期間等という規定が設けられています。

 b)課題

5年という利用可能期間の上限を設定した場合、5年を超えると無期転換規制が働くので、使用者としては、その前に何とか雇い止めしようとする可能性が高いと言われています。その雇い止めが、むしろ頻発するのではないかということが懸念されています。この問題は、上限規制の「副作用」と呼ばれています。
 この建議が出たときにも、「労使を含め、この副作用に対して十分に対処することが求められる」と書かれていました。しかし、法案を見ると、この副作用の具体的対策は特段何も示されていません。そうなると、二番目の柱である雇い止め法理が十分機能するかが非常に大事になります。使用者は、総利用期間が5年に達する前であれば、自由に雇い止めできるのではないかと、今まで以上に思う可能性があるわけですが、従前の雇い止め法理が、きちんと実効性をもって働き、雇い止めは自由にできないことがあることを明確にしないと従前よりも雇い止めが増える可能性さえあるのです。
 また、今回の上限規制は、労働者の申し込みを前提としているので、脱法の恐れが付きまといます。つまり、使用者側は、「労働者側が申し込まなかった」という理由を持ち出す可能性があります。
 この点については、今のところ何も示されていませんが、法案締結過程で、厚労省の担当者が、「自由意思でなければいけない」とか、「それを事前に取り上げるような合意をしたら、公序違反で無効になる」とかと言っています。もしこの法案が成立すると、そういう議論がされるでしょうが、仮にそういう規制があっても、申し込みを前提とするのは、職場では脱法のおそれのつきまとう制度です。
 さらに、5年という上限期間の長さは非常に長期です。主要国の中では世界一長いです。規制として働くだろうか疑問に感じます。
 これに対し、クーリング期間については、そもそも設けることが妥当なのかということに加え、一番長くても6カ月なので、非常に短いことを問題にしなければなりません。
 実は、ドイツの有期パート法は、クーリング期間を明文で否定しています。しかも、従前はクーリング期間の規制がありましたが、この法律を2000年に作ったときに(2001年施行)、あえて設けませんでした。ところが、2011年4月のあるドイツの連邦労働裁判所判決で、労働者の職業選択の自由に抵触するという理由で、この規定は憲法上疑義があるという判断が出ています。クーリング期間を設けないことによって、一度就労したことのある会社が有期契約での雇用を妨げる効果を果たすということで、労働者の就職機会を制限しているというのが実質的な理由です。ただし、このドイツの判断でも、3年以上のクーリング期間に限定してクーリング期間を特別に認めるという合憲的解釈をしています。厚生労働省の担当者は、このドイツの法状況を気にしているため、この判決をさかんに紹介して、クーリング期間を設けることを正当化しようとしていますが、この判断と比べると、6カ月のクーリング期間はいかにも短いです。クーリング期間を設ければ上限規制自体の機能はだいぶ制限されますので、長さの妥当性も含めて大きな問題を残していると思います。
 なお、「無期転換されても労働条件について同一とする」という扱いは、先ほどもお話しましたように、その会社における無期の正規社員の労働条件に必ずしもならないことを意味しています。契約期間を理由とする差別的扱いを強く規制するのであれば、無期化した場合にはよりいっそう強い平等が求められるべきです。契約期間を理由とする差別的扱いは、無期転換した場合はいっさい許されないということを徹底させるべきだと考えています。

(2)『雇い止め法理』の法定化
a)内容

二つ目の柱である雇い止め法理の法定化ですが、雇い止め法理が認められる場合として、二つの有名な判例を挙げています。それが「各号のいずれかに該当するものの」にあたるものです。それを受けて、「客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上、相当であると認められないときは、同一の労働条件で当該申し込みを承諾したものと見なす」という規制が置かれています。
 雇い止め法理の表現については、従前あった二つの判例法理を、7ページの上にあるような表現にしています。これは、判例法理そのものの表現というよりは、労政審段階から言われたことですが、偽装請負・違法派遣の事案として有名な松下プラズマディスプレイ事件・最高裁判決の傍論で述べられた雇い止め法理の表現がもとになっています。
また、前者の東芝柳町事件・最高裁判決は、「期間を定めない雇用契約と実質的に異ならない状態」と判示されていましたが、法案では、「社会通念上同視」と表現されています。
 さらに、7ページの雇い止め法理の二つ目のところで、「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に・・・期待することについて合理的な理由があるものである」と言っています。期待を有する時期を労働契約の満了時に限定しているわけですが、これは相当重大な意味を持つといえます。

 b)課題

どういうことかといいますと、私も、この文言ができる前は、雇い止め法理が法定化されると、一定のメリットがあるはずだと思っていました。有期労働契約の事案で、近畿コカ・コーラボトリング事件というのがあるのですが、この事件では、何度か契約更新したあと、雇い止め法理が適用される状態になったにもかかわらず、反復更新時の労働契約書に、「次の期間満了で契約が終了するものとする」という不更新条項を入れ、労働者に合意させた場合、雇い止め法理の適用よりも不更新に合意した点が優先され、有期契約は自動的に終了すると判断されています。
 しかし、これは雇い止め法理の脱法を認めるようなものです。現時点で雇い止め法理は判例法理で、裁判所は判例法理の脱法を認めたがらなかったのですが、判例法理が立法化されれば、脱法だと構成できると考えていました。
 ところが、こうした点も気にして、今回の法案では、「契約期間の満了時に期待することについて合理的な理由がある」という表現にしたと推測されます。これだと、不更新条項を入れたあとの、最後に契約期間が満了を迎える段階の期待の有無が問題になります。不更新条項が挿入された後は、期待が喪失したと考えられ、不更新条項は結局規制できないのです。このように考えると、今回の法案で「契約期間の満了時」という文言が入ったことは、悪い意味で非常に大きな意味を持っています。
 なお、労働契約法は、公務への適用はありませんが、もし民間の雇止め法理がこのように考えられると、公務における「期待」の考え方にも影響を及ぼす可能性があり、注意しなければなりません。また、先日の研究会で西谷(敏)先生にも指摘されたことですが、これまでは雇い止め法理に基づいて地位確認が認められると、無期になるのではなく、1年契約が存続するのですが、それがまた1年で終わってしまうわけではありませんでした。しかし、この文言だと、不更新合意と類似する問題ですが、従前の判例法理における取扱いと異なり、次の契約で終わってしまう恐れも生じるのです。この点も公務に関する判例で大きな意味を持っている期待の考え方に一定の影響を与えるものでしょう。

 (3)期間の定めを理由とする不合理な処遇の規制
a)内容

そして、三つ目の大きな柱である、期間の定めを理由とする不合理な扱いに対する規制です。これは、「期間の定めがあることにより、同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、その相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」と定められています。
 これについてはいくつか問題があります。まず、「不合理・・・であってはならない」という定め方は、今までの法律例で言うと、「特許法第35条」などと同様の定め方で、実は、非常に変わった規定の仕方です。「合理的であってはならない」とか、いろいろな定め方がありうるにもかかわらず、このような規定を選んできました。日本労働弁護団や日弁連の意見にポイントが列挙されているので、それも見てください。
また、職務の内容及び配置の変更の範囲という要件も定められています。パートタイム労働法にも、「職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して」とありますが、こうした条件が付いていると均等でなくてもいいという話がすぐに出てくることが問題になっていました。むしろ、こうした事情は合理的な理由の存否の中で考慮すれば足りますので、無期労働契約で働く労働者との間の比較条件として持ち出すべきではありません。
さらに、この規定の仕方だと、立証責任の所在も問題になります。法規定の在り方としては、期間を理由とする異別取扱いに合理性があることについて、使用者に証明責任があることを明確にした表現にすべきですが、この規定だと、そうならない可能性が高くなります。
そして、仮に差別禁止規定が置かれても、無効になったあと、差別がなかった場合の労働条件を補充できる規定を設けておかないと、本当の意味での解決にはなりません。しかし、その規定は今回全く設けられていません。

 b)課題

第三の柱の課題としては、補充規定が必要だということ、使用者に立証責任を課す文言にすべきだということ、「職務の内容及び配置の変更の範囲~」という文言は必要ないということの他に、比較対象者の範囲を拡大すべきだという課題があります。実際の現場では、無期労働契約の比較対象者がいないことがあり得ます。これは、諸外国等でも気にされている問題です。これについては、日弁連の意見にも出てきますように、過去、将来、あるいは仮定的な労働者でも比較を可能にするという文言の仕方があり得ます。

 (4)その他

その他で言いますと、今回の法案は、施行時期が二段構えになっていて、わかりにくくなっています。また、厚生労働省令に委ねている箇所があることも、労働契約法の改正内容としては問題があります。さらに、施行後8年の見直し規定があり、改正後8年後でないと見直せないことになっています。そして、有期研(有期労働契約研究会)や労政審段階で途中まで議論されていたのですが、有期であることを明示しなかった場合に無期労働契約とするような効果規定も設けられていません。

 (5)全体的な評価

 以上のような検討の結果を受けて、全体的な評価を述べたいと思います。これはなかなか難しいのですが、まず今回の法案は規制緩和立法ではありません。しかし、すでにお話ししてきたように、判例の内容さえ縮減する恐れがある条項がありまして、西谷先生も先日お話になっていましたように、法案可決が見送られても全く惜しくない内容です。したがって、今後の対応策としては、法案の修正を迫る努力も不可欠です。よりましな法案を求める提案をしていく必要があるということです。
 批判の視点として、運動の側は、締結事由規制を導入しなかったという本質的な点を批判することはもちろん必要です。
 ただ、よりましな規制にすることを目的とした提案も必要となると思います。例えば、全く別の上限規制にすることです。具体的には、労働者の申込みを要件としないとか、上限期間をもっと短縮するとか、クーリング期間を廃止またはもっと長期化するといったことです。また、労働者派遣では、人ではなくて業務を基準とした上限規制が用いられていますが、有期も同じようにすればいいという発想もあり得ます。
 また、上限規制をよりましにするという点で、実現が容易なその他の対案としては、「上限規制」プラス「雇い止め法理」という方法を取っているのが今回の法案の特徴ですが、無期転換規制の適用を避けることが雇い止めを正当化する根拠にならないことを明確にすべきです。
 試用期間の脱法的扱いや、先日のJAL(雇止め)事件のような、労働者の職務能力を審査する目的で締結された有期契約が増えていますが、5年という上限期間が設けられると、こうした扱いがより増えるおそれもあり、規制の強化が求められます。
 さらに、雇い止め法理の適用に際しては、「期待」が重要なキーワードになっています。これは公務にもかかわりますが、期待という概念ですと、締結時または更新時に「更新する」という言動があることにより主観的期待がまず目につくのですが、判例は、これまで様々な客観的事情を考慮して、「合理的な期待がある」と判断してきたことを忘れるべきではありません。期待の有無の判断は、実体的な意味をもつ審査で、主観的なものだけで判断されてきたのではないということです。
 労働条件明示義務の強化もよりいっそう必要になると考えられます。

 

二 公務への影響
1 公務員への適用可能性

 つぎに、この研究会で一番肝心な公務への影響です。労働契約法に設けられるということは民間には大きな意味がありますが、労働契約法は公務員への適用を除外しています。この点については、城塚先生が『労働契約と法』(西谷敏・根本到著・旬報社)に掲載した論文で詳細な分析をしています。
 ただ、いろいろな点を参考にすると、適用のない労働契約法でもいろいろな影響が考えられます。一つは、任用の更新事案の裁判例がいくつかありますが、適用とは別に、いろいろな影響が考えられます。もう一つは、パート労働法も地方公務員への適用を除外していますが、パート労働法を改正したときに総務省は、だいぶ気になったようで、条例などにおいて、こういう内容を踏まえた適正な処遇を確保しなければならないと回答していました。実際、在り方研(地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会)のような、いろいろな研究会を設けて、検討が行われました。

 

2 地方公務における臨時・非常勤職員の種類

 地方公務員における臨時・非常勤職員の種類は、さまざまです。レジュメにあるもので全部列挙できているかわかりませんが、任期の点からみても、これだけの種類があり、それぞれいろいろな制限があります。

3 公務非常勤の雇い止め裁判例

(1)裁判例の流れ

 11ページから12ページにかけては、公務非常勤の任用雇止めに関する主要な裁判例のポイントを挙げました。いくつかの事案で争われてきましたが、民間とは違い、解雇権濫用法理の類推適用を否定するのが主要な流れになっています。なかには類推適用を認めたケースもありますが、これは裁判例の主流にはなりませんでした。国情研(国立情報学研究所)事件の控訴審がこれを否定したことがその有名なものです。
 しかし、いくつかの事案においては、大阪大学の事件で言われた「期待権等に基づく損害賠償の余地」という枠組みが影響を与えていて、賠償責任を肯定しています。ただ、レジュメに書きましたように、結論的には賠償を否定している事案もあります。

 (2)新しい労働契約法が制定された場合の影響は?

この新しい労働契約法が制定された場合の公務への影響の一つとして、次の点を挙げることができます。それは、解雇権濫用法理の類推適用は否定されていますが、結果として、法的保護に値する期待等に基づいて損害賠償責任を認めることがあるのが公務の事案の傾向であるわけです。しかし、「期間満了時に更新されると期待すること」という要件によって、期待は、とにかく満了時を問題にすればよいと徹底されるため、いったん成立した期待でも喪失することがあるという点が、立法上も認められることになってしまい、公務の期待の考え方にも影響を与えます。
 また、裁判例では、認められていなかったとしても、議論としては無期転化効果を認めるべきだとする見解がありました。これが、判例法理ならば、これを認める判断が出る可能性もあったと思いますが、これが立法で定められてしまうと、無期転化効果は、そもそも否定されるので、公務でも無期転化効果を認めさせることは一層遠のきます。
 労働契約であっても、有期の法定更新効果しかなくなりますから、任用ではなく、労働契約ないし公法的な何らかの契約だという議論になっても、そもそも労働契約法でこう定められてしまうと、無期に転化ということは一切あり得なくなります。

4 臨時・非常勤職員の賃金の均等待遇への影響

 最後に、パート労働法改正のときに総務省が非常に気にしていたということとの兼ね合いで、労働契約法に、不十分ながらも均等待遇の規制が入ると、これを参照して考える可能性が高くなります。労働契約法という公務員全般に適用がない法律であり、かつ、公務員の場合、任用の根拠規定ごとに比較対象者を考えなければならないという別の論点が生じることも気にしておかなければなりませんが、労働契約法に設けられた均等待遇規制は、公務にも一定の影響を与える可能性があり、気にしておくべきです。
 以上、ポイントを挙げただけですが、私の報告はこれで終わりです。

レジュメはpdf版にあります(編集部)