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2013.06.07

政府が絶賛する「横浜方式」は、産業競争力強化や国際展開に向けた成長戦略の具体化

横浜市は5月20日、保育所に入れない待機児童が3年前の全国ワーストから、4月1日でゼロになったと発表した。間髪をおかず、菅義偉官房長官は同日午後の記者会見で、横浜の取り組みの全国への波及に期待を示し、安倍晋三首相は翌日、横浜市内の保育所を視察、「5年間で待機児童ゼロを達成したい」と目標実現に決意を示した。
異例ともいえる対応の早さである。

安倍首相は第6回日本経済再生本部(4月2日開催)で、「第4回・第5回産業競争力会議での議論をふまえ、関係大臣におかれては、当面の政策課題として、以下の事項について対応されたい」として、雇用・少子化対策の項で、「少子化対策、女性の活躍推進の観点から、民間企業を含む多様な主体による大小様々な形態での保育事業の拡大を促進した自治体の成功事例を参考に、現在の取組や計画と比べて、待機児童解消策を抜本的に強化、加速化するための方策を具体化すること」を指示した。

さらに、4月19日に行った成長戦略スピーチの「6.女性が輝く日本」では、下記のように述べている。
(待機児童解消加速化プラン)
「待機児童」は、全国で2万5千人ほどいます。深刻です。
しかし、「全国で最も待機児童が多い」という状況から、あの手この手で、わずか3年ほどで、待機児童ゼロを実現した市区町村があります。「横浜市」です。
 やれば、できます。要は、やるか、やらないか。
 私は、待機児童の早期解消に向けて、このいわば「横浜方式」を全国に横展開していきたいと考えています。
まず、これまで国の支援対象ではなかった認可外保育施設についても、将来の認可を目指すことを前提に、力強く支援します。
これまで支援の対象としてこなかった20人未満の小規模保育や、幼稚園での長時間預かり保育も、支援の対象にします。
さらに、賃貸ビルなども活用して、多様な主体による保育所設置・新規参入を促すとともに、事業所内保育の要件を緩和して、即効性のある保育の受け皿整備を進めてまいります。
保育士も確保しなければなりません。
保育士の資格を持つ人は、全国で113万人。しかし、実際に勤務している方は、38万人ぐらいしかいません。7割近い方々が、結婚や出産などを機に、第一線から退き、その後戻ってきていません。
保育士の処遇改善に取り組むことで、復帰を促してまいります。
このような総合的な対策である「待機児童解消加速化プラン」を用意しました。
「子ども・子育て支援新制度」のスタートは、2年後を予定しておりました。しかし、そんなに時間をかけて、待ってはいられません。状況は、深刻です。
そのため、今年度から、このプランを直ちに実施します。
平成25・26年度の二年間で、20万人分の保育の受け皿を整備します。さらに、保育ニーズのピークを迎える平成29年度までに、40万人分の保育の受け皿を確保して、「待機児童ゼロ」を目指します。
その実現のためには、保育の実施主体である市区町村にも、同じ目標に向かって、本気で取り組んでもらわなければなりません。
政府としても、最大限の努力を行い、意欲のある市区町村を全力で支え、「待機児童ゼロ」を目指します。

産業競争力会議は2013年1月、日本経済再生本部の下に設置されたものだが、その目的は、「我が国産業の競争力強化や国際展開に向けた成長戦略の具現化と推進について調査審議すること」である。
第4回産業競争力会議(3月15 日開催)では、「待機児童の解消に向けて、新制度の施行を待たずに、前倒しで対応を進めること。横浜市など先進的な自治体の取組みの横展開が必要」ということが、「雇用制度改革」の論点の一つとしてあげられている。

待機児童解消加速化プラン(首相官邸 2013.4.19)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/women2013.html

待機児童解消加速化プランの支援パッケージ(厚労省 2013.5.10)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000031nsm-att/2r98520000031nwa.pdf

「新制度を見据えた保育所の設置認可等について」(厚労省通知 2013.5.15)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000031y0s-att/2r98520000031y29.pdf