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研究機構の運営委員会における「話題提供」として、自治労連弁護団の尾林芳匡さんに「指定管理者」制度の動向と対応についてお話頂きました。また、当日の質疑討論の一部も併せて紹介致します。フランクな議論を展開しておりますので、匿名にさせて頂きますが、「脱線」あり「専門的なツッコミ」ありで、大変に興味ぶかい内容になっています。学習の素材として、また、具体的な政策対応の参考として、ご活用頂きたいと思います(編集部)。
1 短期間に民間「開放」の「激流」
本日は「話題提供」として、公の施設の「指定管理者」制度について最近の動向も含めてお話したいと思います。昨年6月に、地方自治法の一部改正が成立し、9月に施行されました。従来からの委託の有効期限が06年9月までと切られました。このため、既に自治体出資法人などに管理委託をされてきた公の施設については、06年9月までの期間に、「直営に戻す」か「指定管理者に移行する」かの二者択一を迫られることになっています。
今、全国の自治体で指定管理者への移行をめぐって、期間限定の民間参入の「激流」が起きています。自治労連弁護団では、具体的な紛争に接しながら、これはたいへんなことになったと感じているところです。そこで、どのような問題になっているのか、かいつまんでお話をして、問題提起とさせていただきます。
2 「公の施設」の本来の趣旨
まず「公の施設の本来の趣旨」についてです。ご承知のように地方自治法は、公の施設について、「住民の福祉を増進する目的を持って、その利用に供するための施設」(地方自治法244条1項)と規定しています。広く住民が利用できることに本来の趣旨がありまして、具体的には保育所、老健施設、病院、会議場、公民館、図書館、都市公園、公共下水道、小中学校その他広範なものが公の施設に当たるとされています。
公の施設の法規制として地方自治法に「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」(同条2項)という規定がありますし、「住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取り扱いをしてはならない」(同条3項)とされています。
ですから、「公の施設」は、住民の福祉を増進する目的で、一般には公の財政負担によって設置されているものであり、それに伴って住民の利用権を保障しているし、不当な差別を禁止して、住民の公平な利用を保障している施設であると言えます。
全国にどのくらいのこういう施設があるのかということですが、最近財界系のシンクタンクなどがこぞって取り上げてアピールをしています。例えば、学校は小・中・高合わせて約38,000あるそうです。保育所23,000、幼稚園14,000、老人ホーム7,000、都市公園98,000、公営住宅200万、県民会館、公会堂などが3,000、図書館2,600、体育館が約6,000といった状況です。「公の施設」という地方自治法上の制度として、実にたくさんの施設が全国に設置され、それぞれが住民の利用に供されているわけです。これは、各自治体毎には「市町村公共施設状況調査」によって把握できます。
3 法改正の内容―委託契約から行政行為へ、株式会社も可能
今回の法改正の内容です。従来の法規制と昨年9月施行の改正法を、左右対照する表にしてみました。
「形式」は、従来は委託契約ですが、新制度は行政行為としての条例上の手続きによる指定と言っていいと思います。「委託の対象」といいますか、管理者になれる団体の枠組みが大きく違っていて、従来は自治体出資法人に限定されていたわけですが、改正法で営利企業を含む法人・団体とされました。NPO法人などもなれると言われていますが、主眼はもちろん営利企業を認めたところにあり、民間の営利企業、株式会社などが参入してくることを可能にしたところに、法改正の眼目があります。
「意思決定」については、従来地方自治法では明文でこのような決め方をしなければならないということが規定されず、自治体ごとの条例で決められていたわけですが、今回は議会の議決を経て指定するとされました。その「条件」についても、今回の改正法で管理基準や業務範囲は条例で期間を定める、毎年度終了後の事業報告書を義務付けることが明記されました。
「利用料金」については、平成3年の改正によって従来も受託者が収入にし得るとされていたところを、今回は指定管理者が収入にできるということにされました。料金の決定には自治体の承認が必要なこと、料金の決定を受託者ができること、指定管理者ができることはほぼ同様で、自治体による料金の承認が要るということも同じです。
「自治体の指示」について、従来は業務・経理の報告、それから調査・指示とされていたところがほぼ踏襲されています。指定の取消しという制度ができて、指示に従わないとき、管理・継続が適当でないときは指定を取消し、業務の全部・一部の停止を命ずることができるということが、今回、入れられました。
全体として、法律家として条文だけを見ていますと、従来は条例に委ねられていたところが、地方自治法上の手続き規制が整ったという面が確かにありました。ところが、対象の法人が出資法人から営利会社に広げられたために、大変な問題が起きています。
4 背景と関連する動き
(1)背景
2002年10月の地方分権推進改革会議の「事務・事業の在り方に関する意見−自主・自立の地域社会をめざして」では既に、「公の施設の管理受託者の範囲を民間事業者にまで拡大することが必要である」ということがうたわれていました。また、「消費者主権に立脚した株式会社の市場参入・拡大」をキャッチフレーズにした総合規制改革会議の第2次答申(2002年12月12日)でも強くこの点が要求されていました。
また、PFI法では、公共施設の民間による整備の推進を、主として建設から資材の調達までを中心に規定していたわけですが、今回の指定管理者制度により、施設建設後の管理全般についても営利企業に委ねることが可能になりました。PFI法と今回の指定管理者制度で、公の施設については施設の建設から資材調達、管理まで営利企業が一貫して営むことが可能になったわけです。
(2)法改正後の動向
「地方公共団体におけるPFI事業について」という通達ができて、PFI業者が一貫して指定管理者になっていくことができるのだと明記されています。つまり参入企業にとっては一貫して系統的に収益を上げられる見通しが立つのだということが通達で明確にされたのです。
改正付則(地方自治法附則2条)の問題です。これまでに公社、財団、第3セクター、そのほかさまざまな関連団体・外郭団体が管理者として委託を受けていた場合について、これからはそれはできなくなるということが付則で定められていて、3年間に限った経過措置が認められています。冒頭に申し上げました通り3年以内、つまり06年の9月までに、これまで議会の議決を経て自治体として委託していた公の施設は、いつからどこを管理者として指定するという議決をした上で指定をしなければならないわけです。
委託していたものを直営に戻すということも、もちろん形式上は可能なのですが、実際には今の「官から民へ」という流れの中で、直営に戻すという選択肢はどこの当局者にも見あたりません。したがってほぼ全面的に、既に公的な団体に委託している施設は、3年以内に必ず民間企業参入の嵐にさらされるという仕組みになっています。
(3)個別法の規制―「規制緩和」が進みつつある
個別法には、それぞれの施設の管理者として国や自治体その他の公的な団体に限定をする旨の規制が多数あります。例えば、学校の管理者は国、自治体、学校法人に限定されています(学校教育法5条)。道路(道路法)・河川(河川法)も管理者が法定されています。もっとも、株式会社立の学校法人も「構造改革特区」の中で出てきているので(東京の「レック」など)、地域限定の「構造改革特区」の問題を除けば、一般的には個別法上、まだ規制があるということです。
社会福祉法3条に定める第一種福祉事業(老人ホームなど)の経営は「国、自治体、社会福祉法人に原則として限定」となっていますし、病院は営利目的の場合に開設の制限があり(医療法7条5項)、水道事業は「原則として市町村」(水道法6条)、下水道の管理は「原則市町村だが、困難なら都道府県」(下水道法3条)となっています。公民館は営利事業を禁止していますし(社会教育法23条)、公立図書館で入館料など対価の徴収を禁止する(図書館法17条)といった個別法がまだ改正されないで残っています。
ところが、今回の指定管理者制度の法改正を受けて、昨年11月に内閣府は、「行政サービスの民間開放等に係る論点について」という文書を出して、多くの点で旧来の見解を変更する(緩和する)旨の通達を出す動きが強まっています。個別法の規制と指定管理者制度の関係については今なお動いています。民間資金等活用事業推進委員会が、個別法において公共施設等の設置管理運営の規定がある法律についての事例として、個々の分野ごとにどのような法律のどのような規定で、どんな施設についてどのような団体に管理が法定されているかという一覧表を作っています。そしてそれぞれについて、法改正しなくても民間企業に開放できると記載されたり、通達で周知すればよいとか、一部については法改正が必要であるということが洗い出されており、立法上の手当てがされるという動きになっています。
このように、地方自治法の一部改正による指定管理者制度はあくまで総則的な規定ですけれども、個別法上の規制についても、民間企業参入のためのさまざまな解釈や立法上の手当が目指されている動向にあるということです。個別法上の規制は、教育・福祉あるいは社会教育などのさまざまな分野で、それぞれの法律の目的に基づいて、いわば住民の社会権を保障するために、さまざまな歯止めをかけていたのですが、こうした部分についても、今回の地方自治法上の総則的な規定の変更に連動して、民間企業の参入を拡大する方向の動きが激しくなっているのだということです。
「地方独立行政法人制度」との関係ですが、総務省は昨年7月の通達で、「対象となる事務・事業についてその廃止や民間譲渡の可能性について十分な検討の上、公の施設の指定管理者制度と地方独立行政法人の設立とを比較検討」することが適当だとしています。(通知・総行行第86号外・平成15年7月17日)
つまり、自治体の業務をアウトソーシングしていくという基本方向は動かさずに、そのツールとしてさまざまな法制度を整えたので、指定管理者制度による外注化・外部化が望ましいのか、地方独立行政法人制度がいいのか、それぞれの自治体で取捨選択をして、さまざまな法的なツールを自由自在に使ってくれという立場です。
5 指定管理者制度の問題点
(1)公の施設が一部企業の収益の道具に
このような公の施設の「指定管理者」制度について、どのような問題点があるのかという点に進みます。
一つ目は、公の施設が一部企業の収益の道具にされること自体が、公正さの点で大問題であるということです。経済界は法改正前から熱心にこの法改正を求めていたわけですが、法改正と前後して狂喜乱舞して大騒ぎをしています。
日本経団連は2004年版「経営労働政策委員会報告」で、「行政においては、規制緩和を通じて行政サービスを民間に開放し、この分野の膨大な潜在的需要を顕在化させ、地域活性化と雇用創出へつなげていくことが強く求められる」と述べていて、『財界』と言う雑誌の2004年新年号では、「今年は官製市場改革元年である」という言い方をしています。自治体の市場化を更に推進させていく宣言です。従来も業務委託というのは少なからずあったわけですが、いよいよ福祉や教育など、自治体が公共的に担ってきた業務の中核部分に迫るところで、民間企業参入の動きが一気に加速しつつあるのが、昨年の法改正から今年にかけての動向だと思います。
三菱総研は指定管理者制度導入に伴って、新しい市場拡大のために「パブリックビジネス研究会」というものを立ち上げたそうです。参加企業を募集するための呼びかけ文が手に入りました。呼びかけ文を広く企業に配り、ビジネスチャンスありと考える企業が1口50万円を払ってこの研究会に入りますと、どのような自治体の分野に参入するためにどのようなノウハウがあるのかという情報を、その研究会を通して手に入れることができます。そういう舞台としての研究会を、三菱総研が主催して参加企業を募っています。
その呼びかけ文にいわく、「指定管理者制度の導入により、これまで自治体の直営や財団法人等で運営されていた公共施設の運営は民間企業の運営へと切り替わり、民間企業にとって大きなビジネスチャンスとなる市場が創出される」とした上で、これまで公共が担ってきた事業領域における新規ビジネスを「パブリックビジネス」と定義し、「本研究会では、企業の皆様と共に、パブリックビジネスという新規市場の拡大、さらには官民連携による行政の効率化と公共サービスの向上に貢献していく」とあります。これはPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)です。
5月末に第1回の研究会が開かれたようです。どのぐらいの企業が参入してどのようにやっているのかという実情はよく分かりませんが、いわば企業にとってのビジネスチャンスが何十兆円規模であるのかということを財界系のシンクタンクがアピールする、企業はビジネスチャンスを求める。シンクタンクはそういう企業に奉仕することによって、自らの元へ結集する企業を更に広げる。そのような勢いを持って、怒濤のような勢いで全国の自治体が、いまねらわれているという状況にあるわけです。
富士総研は「公共施設の管理運営業務における民間活用に関するアンケート調査」をやって、昨年の春に結果を発表しました(2003年3月公表)。
法改正前後のアンケート調査の結果、「調査した自治体の9割近くが今後公共施設の管理運営業務にとどまらず、広範な施設・業務に民間活用を導入したいと考えている。もう公の施設の管理は民間開放とほぼ流れは決まった。更に広がっている」と、調査の結果を企業に提供し、ビジネスチャンスとしての参入を促している状況にあります。
このように企業のビジネスチャンスにされるという使われ方は、冒頭にご紹介したように地方自治法が規定する「公の施設」が、住民の福祉のために広く活用される、公平に活用されるものであるという本来のあり方とは、大きくかけ離れたものになっています。「官から民へ」が是である、というのが今のマスコミなどの風潮になっていますが、民間開放によって参入が決まる企業はただ1社に過ぎないのだということに注意が必要です。その地域の自治体財政や住民の税負担によって培われてきた公の施設が、ある特定の企業、指定管理者として指定を受けられた一つの企業だけの利潤の舞台にされるということです。
しかも財界系のシンクタンクは、「公の施設の指定管理者に参入するという分野は、企業にとってリスクが非常に少ない」と言っています。当たり前です。ある施設を活用して収益を上げようとするときには、民間企業の場合には設備投資が要るわけです。設備投資をする自己資金を持たない企業は、借り入れをして返済と金利支払いをしながらでなければ、一定の施設を用いた収益事業というのは一般にはできないわけです。
ところが、この公の施設の指定管理者として参入を果たせば、自治体が税金によって設立して維持してきた施設を、自らが管理・運営をして収益を上げることができるわけですから、企業にとって「ノーリスク」です。設備投資不要のおいしいもうけ口が広がる。これを企業に差し出そうというのが今の動きであるわけです。企業にとって設備投資が不要であるということは、住民や自治体の立場から見れば、住民や自治体の側でこれまで営々と設備投資をして維持してきたものについて、投下資本の回収ができないということを意味します。もちろん、公の施設を企業に売却すること自体よいとは思いませんが、仮に企業の収益の道具とされる場合でも、その企業に出資をさせて地方自治体が投下した資本を回収すれば、それによって得た財源を住民に還元することも可能であるわけですが、そうはなりません。指定を受けた特定の企業にとってのみ、きわめておいしい制度です。
このように、今回の「指定管理者」制度は、「公の施設」の本来の趣旨とは大きくかけ離れたもので、地方自治体に求められる公正さの確保や、公の施設を住民の福祉のために公平に利用させるという趣旨からして、根本的な問題があると考えています。
(2)住民サービス低下のおそれ
指定管理者制度によって、住民サービスは絶えず低下のおそれにさらされます。第一には、営利企業は収益を上げるための制度ですから、利用者・住民の参加、住民によるチェックが保障されているわけではありません。指定管理者が知り得た個人情報の保護にも、大きな問題があるだろうと思います。第二に、指定管理者は毎年事業報告書(業務の実施状況、利用状況、料金収入の実績など)を提出するものの、毎年議会に報告して事業の審議を受ける義務があるわけではないので、主権者である住民の意見を反映させることが難しくなります。第三に、指定管理者となった企業はビジネスチャンスとして参入してくるわけで、事業の質は自治体によるときと同一ではあり得ないだろうと思います。第四に、指定管理者は、利用料金を受け取り、それにプラスして、自治体からの交付金ないし委託料で経営をすることになりますが、高収益をあげたときでも、料金引き下げによってそれを住民に還元する義務があるわけではありません。解説書に「そうすべきだ」と書いてあるものもありますが、そのことが住民にとって確実に担保されるような法制度はないのです。第五に、管理者の指定は期限を定めて行ないますが、期間の長さの制限はないので、特定企業によって長期間にわたり収益が独占されるおそれもあります。
こうしたさまざまな点からみて、管理者に指定された企業の利潤追求を保障しようとするあまり、住民サービスは低下のおそれにさらされると考えられます。たとえば、体育館などの社会教育施設は、住民に低廉な費用でスポーツに参加することを保障するためのものですが、企業が管理者に指定されたところで、利用者が多い休日の利用料金を上げる動きがあります。企業が収益をあげる論理によれば、需要の多い時間帯について高い利用料金を設定することは一定の合理性のあることですが、住民に低廉な費用でスポーツに親しむ権利を保障するという本来の趣旨からみると、大きな問題です。
(3)特定業者と自治体との癒着のおそれ
地方自治法上で首長などは一定の職への就任禁止が定められています。これは自治体当局の情報に最も接する立場にある人が、不公正な利益を獲得することを回避するための法規制です。ところが、指定管理者については今のところ兼職禁止規定の適用がありません。したがって、首長や議員あるいはその親族の関係会社などが指定管理者になる道が開かれています。ビジネスチャンスを狙う企業と行政との癒着、不正、口利きの温床となる危険性が非常に大きいと考えられます。
(4)雇用問題発生のおそれ
すでに公共的団体に対して管理委託をされている公の施設については、06年9月までに各自治体で必ず企業参入の問題が起きてきます。これまで管理委託を受けてきた財団、公団、公社、第3セクターなどは、一般には事業を特化して、ある施設を管理するためだけに設立されているものが多くなっています。ある公の施設を管理するという事業目的に特化されて設立され運営されてきた財団・公社などは、民間企業が管理者として指定を受けたときには、目的とする事業がなくなるということになり、その団体は事業廃止、倒産あるいは解散ということになります。そうなると、これまで公の施設の管理を委託されてきた団体において、雇用問題が発生するということになります。
また、これまでは委託されず自治体の直営とされてきた公の施設について、管理者が新たに指定され、民間企業に管理が委ねられることも、あり得ます。そうなった場合には、これまで直営で自治体労働者が担ってきた施設の管理については、その職がなくなるわけですので、人事異動や雇用問題の発生が余儀なくされます。通常は正規については異動、臨時や非常勤については解雇問題のかたちを取って表れてしまうおそれがあるということです。
こうした問題は、自治体労働者にとって非常に深刻な権利問題ですし、また自治体が公共政策によって解雇問題を引き起こすという意味で、地域経済上も由々しい問題です。現にそういう事態になり始めているし、今後の約2年間のうちに、さらに頻発するおそれがあります。
労働法の問題で言いますと、この指定管理者と自治体とのどちらがどの程度、労働者にとっての使用者なのかという困難な問題があります。労働者の立場からすれば、自治体が指定したのだから、自治体は使用者としての責任を果たせ、という要求になるわけですが、このように行政行為によって管理者が指定され、その管理者が管理の業務を引き受けたことによって、それまでの自治体あるいは公社・財団などによる管理の業務が消滅した場合に、自治体に対して雇用保障の責任を追及できるのかという点については、難しい問題があります。
指定管理者が指定を受けた際に、それまで管理を委託されていた財団や公社の職員の雇用を引き継ぐという場合でも、大幅な処遇の引き下げとくに賃金の引き下げが起きることがしばしばあります。このように雇用不安を梃子に賃下げに同意させることが許されるのかということも、労働法上の大問題です。
6 指定管理者への移行をめぐる動向
(1)移行例
移行例は次第に増えています。横浜市港湾病院の管理は条例改正によって移行したと聞いています。山梨県の丘の公園では、管理公社が廃止され民間企業が管理者としての指定を受けました。北海道の上富良野町立保育園では、保育園について指定管理者制度が導入されたそうです。仙台では「子育てふれあいプラザ」を新設する際に、管理者にNPO法人が指定されました。東京都でも都立公園の新設の際に、指定管理者が民間企業に指定されています。
(2)企業の動き
先程は財界系のシンクタンクの動きを少し紹介しましたが、民間の個別企業の間でも、活発に参入を目指した動きが始まっています。大阪府立体育館については、「シンコースポーツ株式会社」と言う、既に一部の業務委託を受けていた企業が、詳しいこの制度の解説パンフレットをつくって自治体に対して働きかけているそうです。
司法試験予備校の「株式会社東京リーガルマインド」は、「株式会社による公設民営型学童クラブ設置のご提案」という文章を作って、「自治体長様、各ご担当様」という宛名で、手当たりしだいに自治体に向けて営業がファクスを送り、「管理をうちの会社にやらせてほしい。一度説明に上がりたい」というかたちの営業を仕掛けています。
(3)紛争の激増
先程触れた山梨県の丘の公園では、それまで管理の委託を受けていた公社が新たに管理者に指定されず、廃止されたため、公社に働いていた職員の解雇問題が起きました。企業組織変更の際の解雇や労働条件の不利益変更は許されるべきではありません。このような場合自治体には雇用確保に努める責任があると考えられますし、新たな指定管理者もそれまで管理を委託されていた団体の職員の雇用の継続について責任があると考えられます。こうした法理を主張しつつ、議会での議論や住民と共同した運動などにより、雇用と権利を守る取組が広がりつつあるところです。
東京の中野区の保育所では、30ある区立保育所のうち2園に、今年の4月1日から指定管理者を導入し、1園に株式会社が指定されました。もう一つは社会福祉法人でした。そのために二つの保育園にいた自治体職員をほかの保育園に異動させ、自治体正規職員のいない保育園を二つつくり、そこについて指定管理者に移行させました。正規職員については異動の措置が取られたのですが、非常勤保育士については「職の廃止」を理由とする雇い止めの問題が起きて、紛争になっています。
7 どう対応するか
公務員は安定した職業であるというイメージがありましたが、最近は地方公務員中心の組合でも解雇問題の紛争や運動が急増するという状態になっています。こうした状況に対してどう対応するかは、ひとつひとつの問題で、まさに模索の最中であるわけですが、考えていることを三点ほど述べます。
(1)公の施設の住民サービス、住民の公平な利用の視点からの再点検
ひとつひとつの「公の施設」について、住民サービスや住民の公平な利用、そして根本的には住民の人権保障の上で、どのような意味があるのかという点を、住民の立場に立って再点検し、整理していくことが必要であると思います。それぞれの施設がどういう役割を担っていて、どのような管理が必要なのかについての検討を深め、それぞれの施設の位置付けをし直すことが必要だ思います。
たとえば、社会教育施設としての体育館なら、住民が健康で文化的な生活のためにスポーツに親しむ上で、「公の施設」であること、営利の対象でないことの意義がどのような点にあるのかの再確認が必要です。会議場や集会場も、住民が自由に集い自由に討議するという民主主義の上で非常に権利を保障するための施設であることや、利用者の個人情報を保護することがとくに重要であることなどに、あらためて注目すべきです。
(2)自治体労働者と住民・議会の共同した取り組み、条例化の際の工夫
その上で、自治体労働者と住民や議会とが共同して、公の施設を財界・企業の営利の道具にするのではなく、住民の福祉のために活用していく方向で共同していくことが必要だと思います。管理者を指定するための条例についても、さまざまな工夫の余地があると思います。管理者が公正に指定されるためのさまざまな手続保障や、癒着の温床になるであろう兼職を禁止する問題などについて、条例で工夫することも考えられます。それまでその施設の管理に携わっていた人の雇用や勤務条件についての一定の手当てを、指定管理者に移行する際に条例の上で工夫することも考えられます。
(3)外郭団体における組織と運動は焦眉の課題
自治労連としては、公社・財団その他の外郭団体における組織化と運動を急速に広げることが求められます。06年9月までに、期間限定ですべて決着するわけですから、短期集中的に組織と運動を強めることが自治労連としても焦眉の課題になっているだろうということです。
短い時間でしたが、どれほど深刻な事態が起きているかということの一端はご理解いただけたのではないかと思います。ご意見やお知恵をいただいて、ご一緒に取り組んでまいりたいと思います。
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