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【No.53/2005.6.27】
自治体リストラ・市場化をめぐる現局面の情勢と特徴について
城塚健之
本稿は、自治労連弁護団の城塚健之さんが、大阪自治労連・自治体リストラ交流集会(2005年1月16日)で講演した内容をもとに、その後の情勢の変化を踏まえて加筆修正をして頂いたものです。自治体リストラや市場化をめぐる状況と問題点が網羅されており、学習テキストとして最適です。是非、ご活用ください。なお、講演テープを貸与していただいた大阪自治労連に感謝を申し上げます【編集部】。
はじめに
今年1月4日付の朝日新聞に、「私たちがいる所 戦後60年から」というシリーズのトップとして、桐野夏生さんという推理作家のインタビューが載っていました。桐野さんは、弁当工場で働くパート主婦の犯罪を描いた「OUT」という小説で米国エドガー賞の候補に選ばれたのですが(既に文庫版も出ています)、そこで言われているのが印象的でした。
「日本ではなぜ、夫がホワイトカラーなのに妻はブルーカラー労働をしているのか」、「中流に見える家庭の中に『階層的な分断』があることを、夫は、社会は、知っていただろうか。」、「夫たちの会社が人件費を削るためにパートを使い、その労働条件を悪化させればさせるほど、妻たちはより最底辺の周辺労働に追い込まれていく。」
これは、身近なところに貧困化と階層分化が進行しているのに、多くの人はうかつにもそれに気づいていない、ということを指摘しているのではないかと思いながら読んだのですが、このように、日本の労働者の中間層は貧困化し、階層分化が進んでいます。それを促進するのが新自由主義改革といわれるものであり、その主要な柱をなすものとして、みなさん方に影響のある自治体リストラ、公務の市場化があるのです。
第1 自治体・自治体労働者を取り巻く状況 【財界がねらう公務の市場化】 公務の市場化は、三菱総研「パブリックビジネス研究会」が潜在的市場規模を10兆5千億円と試算しているように、財界にとって垂涎の的となっています。これを先頭になって推進しているのが「総合規制改革会議」の後継組織である「規制改革・民間開放推進会議」(議長は相変わらず宮内義彦氏)と、全閣僚がメンバーとなっている「規制改革・民間開放推進本部」です。
そして、こうした財界の要求に応える形で、独立行政法人、PFI、公の施設の指定管理者制度などが矢継ぎ早に制度化され、また新たに、市場化テストが制度化されようとしています。 *市場化の推進イデオロギー こうした市場化の推進イデオロギーとなっているのが、「ニュー・パブリック・マネジメント」(New Public Management)というものです。これは、論者によって説明の仕方がいろいろあるようですが、新自由主義的な行政経営手法の総称と理解しておけばよいでしょう。行政部門の「高コスト構造」の是正のために、行政を民間企業と同様の経営主体とみなし、人件費などのコスト削減を第1の目標におくという考え方です。そこでは、住民は「顧客」ないし「消費者」、労働者は人件費コストとして把握されます。コストは少なければ少ないほどいいということになりますから、これをいかにして削減するかということが最大の目標となってきます。
*内部的民間化と外部的民間化 「ニュー・パブリック・マネジメント」は、大きく分けると「外部的民間化」と「内部的民間化」の二つに分類できると思います。「外部的民間化」は、「アウトソーシング」とほぼ同義語と言っていいかもしれませんが、要は、自治体行政を削って民間の領域に放出することです。それは、例えば、施設の売却を伴う民営化であったり、指定管理者制度であったり、業務委託であったりします。PFIもこの一種です。地方独立行政法人は、レジュメでは括弧に入れていますが、半分は民間に足を突っ込んでいるという意味です。純然たる外部化ではありませんが、中間的な形態なので、一応「外部的民間化」にリストアップしてあります。 それから、「市場化テスト」(まだ、制度はできておらず、これからつくろうとしているのですが)、も「外部的民間化」に入ります。 他方で、いくら「小さな政府」を志向しても、すぐにスリム化は実現できませんし、政策立案や権力作用はおそらく最後まで公務として残さざるをえません。そこで、その部分のコストパフォーマンスを上げるために、民間の経営手法を取り入れる傾向が強まってきます。これが「内部的民間化」です。その中身は非常にバラエティーに富んでいますが、市町村合併から始まって、トップマネジメント強化・トップダウン、行政組織の簡素化、成果業績主義人事管理の仕組みなども、この「内部的民間化」ということになります。IT化、外部監査などもその中に含まれます。 レジュメには、情報公開などにもふれています。これは、民主的で、好ましい制度ではないかと考える人が多いと思います。もちろん、そういう側面は確かにあります。しかし、同時に、効率化のための手段、つまり市民の批判にさらしてコストを引き下げるためのツールとしての位置づけもあるわけで、どのように使われるかは注意する必要があります。
*バリュー・フォー・マネー 市場化が進行して、外部に対しても内部に対しても民間化を進めていく場合の、キャッチフレーズが、「バリュー・フォー・マネー」(Value for Money)です。これは、「お金に見合った品質のサービス提供」ということですから、民間化すると行政のサービスの質が落ちるというような単純なものではありません。推進側は、市場化すれば、顧客満足度は上昇するということを売り物にしています。ですから、「民営化イコールサービス低下」という単純な批判ではたたかえません。ここでのポイントは、「その値段に見合ったもの」ということです。ここは運動をしていく際にも、気を付けておいたほうがいい部分です。 *パブリック・プライベート・パートナーシップ 最近では「パブリック・プライベート・パートナーシップ」(Public Private Partnership)−略してPPPと言い、日本語に訳すと「公私協働」となりますが−これもまた盛んに言われるようになっています。官民あるいは公民が協働して住民のサービスに当たるという考え方です。 これを市民参加、すなわち民主的な方向であるとして歓迎する向きもあります。NPOの関係者などの中には、これまで日陰の存在だったのが、ようやく認められてきたというニュアンスで言う人もいます。マスコミもおおむねこういう方向で取り上げます。 そういう側面はもちろん否定できません。しかしながら、これは、市場化を推進するためのイデオロギーであることに注意をする必要があります。ここで「プライベート」というとき、それは民間営利企業も含むものだからです。 また、NPOと言ってもさまざまで、実績がありノウハウもきちっとしているNPOもあれば、そういうレベルに達していないものもあるわけです。それで、市場において直接競争することになれば、体系的に知識とノウハウを集積している民間営利企業に、未熟なNPOが正面から対抗できるはずもありません。 また、おそらく、都市部と地方とでは状況が違うのではないかと思います。地方では、地域全体の経済が沈下しています。そして、三位一体改革で交付税が削減され、経済は不振で税収はのびない、ということで財政的に逼迫してきますと、どうしても経費節減のために、外郭団体にまかせて安い労働力に頼るということになりがちです。また、そういうところでは就職先もありませんから、安くても自治体の仕事ができるとなると、人が集まってくるわけです。大阪も構造的に地盤沈下していますから、そのような傾向はあると思います。 このように、「生き残り」の一つの方法として、やむをえずNPOや外郭団体化を選択する側面が出てくるのだと思います。こういった方向は、労働者の立場からすれば決してよくないのですが、頭ごなしには非難できません。 ところが、都市部では、儲けになるので、企業がどんどん進出してきます。NPOも、企業と棲み分けをするか、正面からの競争となれば、NPOが企業化していく可能性もあります。 ですから、場面、場面によって、このPPPというのは、批判の仕方・考え方が違ってくるのと思いますが、基本は、際限のない公務の市場化に道を開く議論ではないかと思っています。 【中央省庁改革のコンセプト】 そこで、具体的にどのように自治体を組み替えていくのか。これは、中央省庁の改革の方向が一つの参考になります。1998年に「中央省庁等改革基本法」と言うプログラム法が作られ、そこで方向づけがなされ、それに基づいて省庁再編などが進められてきました。そこにはいろんな考え方が示されていますが、リストラの関係で核心をなすと思えるのが「企画と実施の分離」です。ここで、「企画」というのは、いろいろな政策や企画を立案する、戦略本部のようなところです。これに対して「実施」というのは、決められた方針に従って現場で実行していくという部分です。すなわち、「企画」は「頭」、「実施」は「手足」ということです。これを切り離していくということです。 切り離してどうするかというと、「企画」の部分はエリートが担う部分であり、これは公務として残す。「実施」の方はノンエリートが担うわけですが、別に公務員がやる必要がないということで切り離し、国から民間や地方自治体に放出する、または廃止をするという方向になります。 自治体もこれと同じです。自治体の場合は、民間に移譲するか、廃止するかの選択となります。 また、その中間的な存在として独立行政法人を使うこともあるわけです。ですから、地方独立行政法人も市場化へのワンステップ、中間形態という位置づけになります。 大阪府の府立病院の独法化も、国立病院機構と同様に特定型(公務員型)ということですので、まだ、それなりに行政のコントロールが利いているわけですが、市場化に一歩近づくシステムだと言えるわけです。
*立法の嵐 こういった考え方に基づいて、いろいろな改革を進めるための法律がこの数年の間に次から次へとつくられてきました。下記に年表形式で法律の名前だけ列挙してみましたが、毎年、毎年、新しい法律が作られたり改正されたりで、怒涛のように進行しています。それは、財界にそのようなニーズがあるからにほかなりません。 *****************************年表**************************** 1997年 * 「行革会議最終報告」・・・「実施部門のうち事務・事業の垂直的減量を推進」 * 労働者派遣の原則自由化 1998年 * 中央省庁等改革基本法 *労働法改悪(有期雇用拡大等) 1999年 * 独立行政法人通則法、同個別法 * PFI法 2000年 *「行政改革大綱」 2002年 * 構造改革特区法 2003年 * 構造改革特区法改正 * 労働法改革(有期雇用拡大等) * 地方独立行政法人法 * 地方自治法改正(指定管理者制度) 2004年 * 地公法・地方任期付職員採用法改正 2005年 * 公務員法改正(能力等級、裁量労働制)?? ************************************************************* (注)公務員制度改革は、労働基本権無視についてのILOの批判や、権限が縮小される人事院の抵抗もあって、頓挫した形になりましたが、今般の大阪市職員に対するバッシングを機に、地方公務員の政治活動への刑事罰の導入などという「改革」がなされようとしています。 【財界の国家ハイジャック】 次に、「市場化」がどのように進められているかを見ていきます。 多国籍化した資本は、新たな投資先、新たな事業の展開先を常に求めているわけですが、それが現在、公務の領域を「官製市場」などと呼んで、ターゲットにしようと動いているわけです。 こうした財界の要求を体現して公務の市場化をあおっているのが「総合規制改革会議」(議長 宮内義彦氏)でした。この「総合規制改革会議」というのは、建前としては、国の機関という位置づけですが、この委員が選挙で選ばれているわけではありません。中曾根内閣時代からの「審議会方式」ですが、民主的な選出過程を経ていない人間が、あたかも「公の存在」であるかのような顔をして言いたいことを言い、それが政策にストレートに反映されるという状況が進んできました。 この「総合規制改革会議」には、いわゆる人材ビジネスの代表者が何人も入り込んでいます。議長の宮内義彦さん自身、オリックスの会長で、傘下に人材派遣会社を持っています。永山利和先生の言葉をお借りすれば、いわば、財界が国家をハイジャックしているような現象が起きています。 *「民間でできるものは官は行わない」 「総合規制改革会議」の第2次答申(2002年12月)は、「官民役割分担の再構築」として、「民間でできるものは官は行わない」ということを言い出しました。それまでは「民間でできるものはできるだけ官はゆだねる」という言い方をしていたのですが、極めて強気な言い方に転じた一つのエポックです。
そこで強調しているのは「消費者主権」です。「消費者主権に立脚した株式会社の市場参入・拡大」を進めていくということで、医療・福祉・教育・農業をメインターゲットに据えました。 そして、年度途中にもお尻を叩くような形で中間答申などを出していき、第3次答申(2003年12月)では、ついに「公共施設・サービスの民間開放の促進」がトップのテーマに躍り出ました。 ちなみに、この「総合規制改革会議」は、名前からも分かるように、いろいろな分野の規制緩和を主張してきたわけです。派遣労働や有期雇用の拡大、裁量労働制の要件緩和など、労働法の規制緩和=改悪の提唱をしてきましたが、第2次答申で提唱した内容がほとんど立法化されてしまい、ほぼ目的を達成した結果となりました。そこで、残る最大の課題として、第3次答申では「公共施設・サービスの民間開放の促進」がメインに据えられ、PFI、指定管理者制度の活用促進、道路や河川の占用許可、公園施設の設置管理の弾力化、公共サービスのアウトソーシング推進などが打ち出されることになったようです。 ところで、どの分野でも実態は先行するものですが、公共サービスのアウトソーシングでも、すでに先行している実例があります。北海道に「えりも町」と言う自治体があります。日高山脈の南端で「何もない町です」という歌がありました。そこで全職員の3分の1に当たる臨時非常勤職員を、全員、大新東と言う東京のアウトソーシング会社に転籍させたそうです。身分は、東京に本社のある会社の社員になったわけですが、実際に働いている場所も仕事の内容も変化はありません。ただ、給料の出所だけが変わっただけです。ですから、違法派遣にならないかという疑問も出てきますが、大新東は、現地に管理者を置いて、派遣ではないような形をとっているとのことです。しかし、その実態はよく分かりません。 いずれにしても、町の職員の3分の1が人材ビジネス会社の社員になって、これらの社員が、学校給食、福祉バス、保育園、ごみ収集などいわゆる現場の仕事を行っているということです。 この大新東と言う会社は、日光江戸村と、北海道では登別伊達時代村などのテーマパークの経営をやっている会社が土台だったらしいですが、現在は人材ビジネスに特化しつつあるようです。 *「市場化テスト」「数値目標の設定」 さらに、こういった民間開放促進のための手段として「市場化テスト」とか、「数値目標の設定」ということが提唱されています。 「市場化テスト」というのは、あとでもふれますが、官民で競争入札を行うということです。例えば、どこかの市の水道局と民間の水道会社の両方に入札させて、競り落としたほうにやらせるということです。それで、水道局が入札で負ければ廃止するしかないということになります。 もう一つ、「数値目標の設定」というのは、例えばある年度の終わりまでに、今、官でやっているもののたとえば15パーセントを民間にする、などという数値目標を掲げて、それが年度の終わりに達成できたかどうかをチェックしていくというやり方です。そういうことを第3次答申では言っております。 「総合規制改革会議」は2004年4月に、衣替えをして、「規制改革・民間開放推進会議」になりました。議長は同じく宮内さんです。これは民間議員で構成する組織ですが、他方、これに対応する組織として、全閣僚で構成する「規制改革・民間開放推進本部」が立ち上げられました。非常に紛らわしいですが、この二つがキャッチボールをしながら、民間開放を進めている状況です。 *財界系シンクタンクの動向 そして、財界系のシンクタンクがこれをバックアップする動きをしております。 例えば三菱総合研究所の「パブリックビジネス研究会」と言うのは、1社50万円の会費を取って、いろいろな企業を参加させ、規制緩和の提言をしたりしています。富士総合研究所は、自治体アンケートでどういう部門にニーズがあるかについて調査をしています。野村総合研究所などもいろいろな論文を発表するなどしています。その論文を見ますと、たとえば、学校給食や保育所、施設の管理など職員数が多いところについては、退職・補充などをやっていると面倒なので、一気に民間企業にくら替えをして、労働者については、行政本体に吸収するとか、早期退職や転職の斡旋をするとかすればいいのではないか、などといったことが述べられています。 *ビジネスオンリー・人権感覚なし こうした財界系シンクタンクの提言には明確な特徴があります。それは、いずれも全国にどれだけ対象施設があるか、どれだけ儲かるかという観点から分析を始めていると言うことです。どの程度の大きさの市場なのかということを分析して、どこをどう攻めていけば儲かるか、ということから検討を加えている。すべてビジネスの観点です。それのみであって、人権保障とかそういう観点は全くありません。 【地域再生本部】 もう一つは、少し違った切り口になりますが、「地域再生本部」が2003年10月24日に立ち上げられ、2004年4月に「地域再生法」が公布・施行されました。そのコンセプトは、今、地域経済が低迷しているので、地域の雇用をつくり出すために、従来公的主体が担っていた事業をアウトソーシングして民間企業を参入させる。そこで雇用を創造し、地域再生を行うというものです。具体的には公益的施設の整備・運営、環境対策に資する施設の整備・運営、施設整備・運営を通じた地場産業支援などがこれに含まれます。 しかし、公務員の数を減らして民間の不安定雇用を増やすだけですから、これが正しい方向と言えるのか、大きな問題があると思われます。 地域再生法は、こういった内容のほか、民営化の引き受け手となる民間企業の支援をするために、例えば税制上の優遇措置を行うとか、あと、学校など国の補助対象施設の目的外使用をする場合の手続きの簡素化などを用意しています。 都市と地方とは局面が違うと先ほど言いましたが、それを前提に、地方用にいろいろなメニューを用意してきているということです。
第2 自治体アウトソーシング 【指定管理者制度】 1)指定管理者制度の概要 次に、自治体アウトソーシングのいろいろなツール(道具)について説明します。この間、自治体アウトソーシングを進めるための法律の道具立てがかなり出そろってきましたが、さらにまだ「市場化テスト」というツールをつくろうとしているというのが現状です。詳細はこの『Q&A自治体アウトソーシング』をご覧いただきたいと思いますが、現在、一番猛威を振るっているのが指定管理者制度なので、ここから始めたいと思います。 最初に、ごく大雑把に制度のアウトラインを説明しておきます。「公の施設」、これは非常に広範囲にわたります。地方自治法244条では、「住民の福祉を増進する目的を持って、その利用に供するために自治体が設ける施設」と定義されていますが、具体的には、保育所、老健施設、会議場、公民館、図書館などの公園、港湾など、非常に広範囲な施設が含まれます。 そこで、例えば、学校給食設備が公の施設かという論点があります。弁護団でも議論しましたが、総務省サイドでは、学校児童しか使わないので「公の施設」でないという話になっているようです。ただ、境界があいまいな部分なので、今後、どっちに転ぶか分かりません。むしろ、市役所の庁舎とか警察の留置場とか、例外を探して省いていったほうが早いように思われます。 2)新旧制度の違い これまでは、業務委託制度がとられてきました。施設を入れ物としますと、入れ物の中身(業務)だけを委託してきたわけです。ですから、入れ物の管理権、建物・施設の管理権はあくまでも自治体が持っていました。 また、業務を委託する相手は、公的主体に限定されていました。@地方自治法上の公共団体、A公共的団体(公益法人、農協、生協、自治会等)、B自治体出資法人(50%以上出資の第三セクター)がそうでした。しかし、指定管理者制度では、こういう限定がなくなります。 *指定管理者の指定は「行政処分」 指定管理者制度においては、「契約」によるのではなく、管理者指定という「行政処分」により、私企業に管理権限の設定をします。指定管理者は団体であることは必要ですから個人に対しては指定できません。しかし、団体の範囲についての制約は一切ありませんので、純然たる営利企業も参入できます。これまでは株式会社といっても第三セクター、しかも自治体が50%以上出資しているというのが条件でしたが、そういう条件がはずれます。全国にネットワークを持っている企業は、全国どこにでも参入できるという仕組みになったわけです。 それから、管理者として指定された以上、指定管理者である私企業がみずから行政処分もできます。使用許可処分を指定管理者が行うことができるようになるわけです。利用料金決定、利用料金収受、これらは実は以前からも規定がありましたが、条例で枠を決めて指定管理者が利用料金を決めることができます。利用料金を受け取り、これを収入の一部として経営をするわけです。 *手続き 手続きですが、まず基本的な条例を決めなければいけません。条例の形式には特に制限がないので、自治体によって違いますが、自治体の施設全体を包括的に管理する条例でもいいし、施設ごとに定めている条例でもよいということです。そして、あらかじめ議会の議決を経たうえで自治体が管理者指定を行います。これは行政処分ですから、入札の対象外です。従って、公募することすら条件にはなりません。公募がいいのかどうかという問題はいろいろ議論もありますが、制度的には必要ないわけです。そこでどういう条例を作らせるかが焦点となってきます。 それから、指定期間の定めは要しますけれども、期間制限はありません。1年でもいいし、30年でもいい。 そして、自治体はチェックがあまりできなくなってしまいます。一応、年度末に事業報告書を出させたり、何か起きたときには自治体が調査権を行使したりという規定はあります。しかし、こういうのは伝家の宝刀というか、往々にして形骸化するもので、実際には、民間企業に丸ごと投げられる仕組みであるといってよいと思います。
*「経過措置」―来年9月までに選択が求められる 「経過措置」ですが、現在、外郭団体などに委託をしている施設につきましては、2006年9月までに指定管理者制度に移行するか、直営に戻すか選択を迫られることになります。となりますと、恐らく今年中に多くの自治体でこの指定管理者制度に向けての流れが確立していくだろうと思います。 3)個別法の規制―水道・下水道法、社会福祉法、社会教育法、図書館法等 公の施設の管理権を丸ごと営利企業に委ねることを可能とする指定管理者制度は公共サービスを一気に市場化するツールです。あとでまた説明しますが、PFIと結合すれば、たとえば市民会館、保育所、老健施設などを複合施設として、企画、設計、建設から完成後の運用までトータルにビジネスの対象とすることも可能となります。
もっとも、この指定管理者制度がオールマイティというわけではありません。個別法の規制があるからです。指定管理者制度は地方自治法という一般法上の制度ですが、個別法(特別法)は一般法に優先しますから、個別法があってさまざまな規制が掛かっていれば、そちらが優先するわけです。 典型例が学校です。学校の管理者は設置者である国、自治体、学校法人に限定されています。この法律自体を変えてしまわない限りは学校の施設を民間企業に開放することはできません(もっとも、構造改革特区の事例は除きます)。これが参入側の障害となっています。 学童保育などで、学校の空き教室を使っている場合には、この個別法の制約がありますので指定管理者制度に移行できません。ですから、その場合は業務委託方式を採ります。他方、児童館で学童を行っている場合は、児童館は個別法の制約はありませんので、児童館丸ごと指定管理者にできるということになります。 ところで、学童保育の指定管理者になることで、民間企業ははたしてもうかるのかという疑問も出てきますが、結論的には大変有望な市場なようです。 道路は、国道、県道、市道などという用例からも明らかなように、それぞれ法律で管理者は決まっています。河川についても同様です。 水道については、実はかなり抜け道ができています。原則として市町村経営(水道法6条2項)となっていますが、第三者委託が2001年に緩和されています(法24条の3)。もちろん、利用料金を取る場合には、指定管理者は水道法上の事業者となるために大臣の許可(法6条1項)が必要だとなっていますが、大手の水道会社がこれに参入してきますと、多分許可を出すでしょう。それから、給水区域の市町村の同意が必要という制約(法6条2項)がありますから、首長さんの姿勢にかかってきます。 次に、下水道です。下水道だけで商売になるのかという疑問もありますが、やはり商売になるようです。実際には、民間企業への業務委託は進行しておりますし、9割を超えているというデータもあるそうです。これは実は市場にすでにかなりの程度明け渡していると考えたほうがよいかも知れません。 行政との間で激しい攻防があったのが、「第一種福祉事業」である老人ホームです。以前、厚生労働省は、株式会社は参入できないという解釈をとって、そのような通達も出していました。ところが、最近になって、自説を撤回して、「可能である」と言い出しました。それは、こういう理屈です。老人ホームについては、老人福祉法15条で、「設置」は市町村、社会福祉法人に限るとされています。ところが、厚生労働省は、ここで主体が限定されているのは施設の「設置」だけである、設置された後の運営や管理については何も制限していない。他方、社会福祉法62条2項では、もともと都道府県知事の許可があれば「経営」は民間でもできることになっているではないか、ということです。かくして、厚労省の解釈変更で、老人ホームは指定管理者でいけるということになりました。 それから、社会教育施設もターゲットになっています。 まず、図書館が問題になりました。図書館法では、館長や教育委員会が必要と認める専門職員(司書など)は必置(法27条)とされています。それで、かつて文科省(文部省)は、館長等は公務員でなければならないとしてきました。そうなると民間企業が指定管理者になるのは困難となります。これは、博物館についても同様です。 ところが、文科省は、指定管理者制度をとる場合には館長は民間人でもよい(つまり指定管理者になる企業の用意する民間人を「館長」にすればよい)と言い出しました。 もちろん指定管理者になったとしても、公立図書館では入館料等の対価徴収はできないとなっています(図書館法17条)。しかし、入館の対価ではない別の有料サービスを行う可能性はあります。絵本の宅配とか、さまざまなビジネスの可能性があるわけです。ですから、本当にちょっとした「すき間」を狙って金もうけの対象としようとするわけで、全国の隅々で激しい攻防が出てきているのが現状だろうと思います。 他方、公民館についても、営利事業が禁止(社会教育法23条)され、館長も必ず置かなければいけません。また、館長や主事その他必要な職員は教育委員会が任命(法28条)となっています。図書館法と社会教育法では規定の仕方が少し違っているので、文科省は、当初は公民館について指定管理者にできるとは言っていなかったのですが、後になって、公民館についても図書館と同じということを言い出しました。事業者にとっては公民館の方がいろんな事業がやりやすくて魅力があるようです。 4)指定管理者制度の導入状況 ちなみに、どの程度、指定管理者制度への移行が進んでいるかという調査結果を、昨年(2004年)12月に総務省が発表しています。 総務省:指定管理者制度の導入状況 もっとも調査時点は遡りますし、状況はどんどん変わっていきますので、おそらく現在とはかなり異なると思いますが、都道府県別で指定管理者制度の導入「施設数」を見ると、大阪府全体では40という数字が挙がっています。このうち政令指定都市(大阪市)で6、市町村で34。府はゼロになっています。「自治体数」で見ますと、大阪府全体で10、内訳は大阪市と9市町村となっています。 もっとも、地方自治法の定めた経過措置のリミットが2006年9月と迫っており、現在外郭団体に委託している施設は直営に戻さない限り指定管理者制度に移行せざるをえませんから、今後急増すると思われます。そして、従前委託を受けていた外郭団体が指定を受けられなければ、ただちに大量解雇等の問題が発生するおそれがあります(指定を受けてもコスト削減のために労働条件が切り下げられるおそれはあります)。 ちなみに全国の状況を見ていきますと、例えば岩手とか広島とか宮城といった地方でもかなりの数が載っています。宮城は、仙台市が大変多いですね。長野市とかも多い方です。これは先程言いましたように、三位一体改革の中で地方の財政が締め上げられる中で、進行しているわけです。 *営利企業の参入の状況 指定管理者となっている団体の種類別に見ますと、株式会社・有限会社といった営利企業は113で、全体が841ですから、約15%程度と見られます。あとは、財団法人、社団法人、その他公共的団体ということになります。 15%だから、営利企業が少ないと見るのは正確ではありません。大規模で収益性の高い施設に営利企業が集中している可能性もあるからです。 また、おそらくこれは、都市部(東京と新幹線で直結しているような地方都市を含む)と地方とではだいぶ表れ方が違うと思います。都市部では大企業も含めて営利企業が争って参入しています。これに対し、地方では、社会福祉協議会などと並んで、市町村100%出資の株式会社などが指定を受けているケースが多いようです。それは、「三位一体」改革で兵糧責めにあった自治体がやむをえず低賃金労働力利用にシフトしているという側面だろうと思います。そこで労働が劣化させられるのは問題ですが、私は、単なる民間化と市場化とは分けて考えるべきではないかと考えています。 *どのような「公の施設」がターゲットになっているか どんな施設がターゲットになっているかといいますと、多いのはレクリエーション・スポーツ施設で22.7%、文教施設、いわゆる市民会館とか文化会館とか博物館といったものが24.5%、それから医療・福祉施設ということで、病院とか老人福祉センターが35.1%です。医療・福祉、社会福祉施設がパーセンテージとしては一番多いわけです。 ちなみに大阪府では、堺市が4施設、池田市、茨木市のデイサービス、八尾市がデイサービスセンターと障害者福祉センター。河内長野市がコミュニティセンターなどです。 *募集の形態 募集の形態ですが、約半分強が「公募」、半分弱が「それ以外の方法」です。 また、これまで委託を受けていた団体が指定管理者になったケースは全体の6分の1程度です。ということは、指定管理者制度に移行する場合、これまでのデータからしますと、6分の5の団体は入れ替わってしまうということです。それは、6分の5のケースでは、そこにいた労働者が、下手をすると首切りをされている可能性があるということを意味しています。 *期間について それから、指定管理者制度でいったい何年の指定しているかということですが、1年とか3年とかいうのが多いようです。「1年」、「3年」、「5年」だけで半数以上です。とにかく短いのが特徴です。先が見えないから期間を区切ってやるということでしょうけれども、逆に言いますと、期間が短いということは、それだけ働く労働者の立場は不安定だということです。自治体にとっては、そのほうがどんどん企業を選べてよいではないか、という発想でしょうが、労働者にとっては(あるいは受注する団体にとっても)たまったものではありません。短期間の指定を繰り返していけば、結局は、一時切られても持ちこたえることのできる体力のある企業だけが生き残るということになるでしょう。 他方で、「10年以上」も1割を超えています。これは、多分PFI絡みでしょう。PFIの場合、20年、30年というのはけっこう多いです。そうしますと、これだけ長きにわたって特定のPFI業者との癒着が生ずるということにもなります。 【PFI―Private Finance Initiative 】 次にPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ Private Finance Initiative)について説明します。 PFIというのは、「民間の資金やノウハウを活用した公共サービスの提供」ということですが、労働運動とあまり関係がないような感じがして、注意がおろそかになる可能性がありますが、『Q&A自治体アウトソーシング』では、特に注意をして丁寧に書いている部分です。指定管理者は、できあがった施設をどう管理・運用していくかというレベルのものです。しかし、PFIは、管理・運用の場面だけではありません。そこでは、施設を設計、施工して、完成後に運営をして、最後に取り壊すまで、全部民間でやることが想定されています。こうした過程では相当大きなお金が動きます。こうした莫大な予算がビジネスの対象になるわけです。そして、大きなプロセスのうち、施設管理運営部分について、指定管理者制度が使われるというかたちになるわけです。 PFI法は1999年につくられた法律ですが、議員立法でつくって、手直しをして、どんどん進化を遂げている法律です。 現在、どの程度PFIが行われているかというと、実はそんなにまだ多くはありません。 「自治体PFI推進センター」という所がいろいろな統計資料をホームページに出していますが、2004年11月8日時点では自治体で134件、国等では63件です。しかし、非常に大きなビジネスになるということで注目されております。 自治体では、例えば、文化会館や生涯学習センターのような教育・文化関連施設をまとめて造る場合、あるいは、小学校の校舎整備とか給食センター、あるいは社会福祉施設、廃棄物処理施設などが、まさにもうかる対象になります。 契約は入札とは限りません。「公募型プロポーザル方式」と言いまして、民間企業に提案をさせてどこが一番安くて、なおかつ収益も上がる提案をしているかということを競争させて判断していくケースが多いです。そして、指定管理者制度とがつながることによってハイレベルの利益追求が可能となります。 ちなみに、内閣府のPFI推進委員会は、医療・福祉施設、産業廃棄物施設、刑務所といった管理業務の比重が大きい複雑な事業がPFIにふさわしいと言っています。相当のお金が動き、コスト削減も期待できるということでしょう。 PFIでは、特定の事業者との取引関係が長期固定化する傾向が顕著です。先程、指定管理者について指定期間10年以上というのが1割あると言いましたが、PFIのケースですと20年、30年の契約をしているケースがざらです。 もちろん、そのようなところに地元の中小企業は参入が困難です。当然大都市の大手企業やベンチャー企業などが、単体またはジョイントベンチャーを組むなどして参入してきます。 また、PFIでは、利益優先に変わるために労働環境が悪化するという問題もあります。これは、われわれだけが言っているのではなくて、推進側も「そういう問題がある」とは言っているのです。言っているけれども、「だから気をつけてやりましょう」ということを言っているわけです。 【市場化テスト】 次に「市場化テスト」(官民競争入札)です。これは、イギリス・サッチャー政権時代の強制競争入札(Compulsory Competitive Tendering)に源流を持つ、公務の市場化の切り札であり、「規制改革・民間開放推進会議」が導入に執念を燃やしています。ここでは、「テスト」といいながら、一度市場化された業務が再び公務に戻ることは予定されていないところに注意する必要があります。また、雇用問題等が発生するのは指定管理者の場合と同じです。 「市場化テスト」の全体像ははまだ明らかではありませんが、「規制改革・民間開放推進会議」は、「国の事業をまず先行実施する」といっています。 そして、2005年度に3分野8事業、すなわち@ハローワーク(公共職業紹介など)、A社会保険庁(国民年金保険料徴収など)、B行刑施設(刑務所等)をモデル事業に選定して、これを突破口とし、必要な法的措置も整備して、2006年度から全面的に施行する構えのようです。 今、社会保険庁が無駄金の問題で相当たたかれて、「こんな役に立たん役所は解体してしまえ」などの声も出ています。そこで、民間企業が出てきます。民間企業になったらどうなるかというのはマスコミではほとんど問題にされていません。だいたいこんな手法が多いのですが、不祥事をとらえて、民間の血を入れろという議論になるわけです。 国の事業を先行実施しますが、自治体も含めたすべての官業を対象にすると言っています。また、これとは別に、大阪府も独自に市場化テストを進めようとしています。 法的枠組みの構築としては、例えば、「市場化テスト法」という包括的な法律をつくるという方向が考えられています。また、その内容としては、官民競争を前提とした入札制度の実現が謳われています。そのほか、官と民が対等に競争できるようにということで、情報公開制度(直接・間接費用、補助金、免税額)、あるいは競争条件を均一化する(イコールフッティング)、監視機能を第三者機関に委ねる、などということを言っています。 *「市場化テスト」の民間提案 「規制改革・民間開放推進会議」は、モデル事業選定に先立って、どういう事業に参入したいかと、民間に提案を募集しました。すると、たくさん出てきました。その結果が「規制改革・民間開放推進会議」のホームページで公開されています。 例えば、ハローワークの職業紹介事業では、パソナ、マンパワー、グッドウィル等の人材派遣会社の名前が並びます。東京リーガルマインド、もとは司法試験の塾で公務員試験予備校にもなっていますが、ここも名乗りを上げています。おそらくこれは、囲い込んだ学生に職業訓練、職業紹介サービスを販売するという戦略でしょう それから、社会保険料とか国民年金保険料の徴収は、銀行系、信販系、サラ金系等の債権回収会社(サービサー)が手を挙げています。これまで多重債務に陥って払えない人からいかにそれを回収するかということでノウハウを築いてきた会社が、そのノウハウを使って公的な社会保険料や国民年金保険料の徴収に参入しようということです。 それから刑務所。企業名は公開されておりませんが、刑務所はアメリカでは大きなビジネスになっております。おそらく警察と深い関係にある警備会社などが参入をねらっているのでしょう。ちなみに、姜尚中/テッサ・モーリス−スズキ『デモクラシーの冒険』(集英社新書)では、FBIやCIAと深い関係にある多国籍企業ワッケンハット社が、刑務所と警備関連事業の世界的な複合ネットワークを展開していることが紹介されています(この本は『自治と分権』の書評で「必読文献」とされていたので、読んでみたのですが、本当にすごい対談集で、大変勉強になりました)。 それから「バックオフィス」というのは、オフィスの裏方をやるということです。例えば人事とか給与、これは民間のコンサルティング会社がやりますと言っていますし、文書やデータ管理というのは新日鐵の関連会社が手を挙げています。 あと、独法化した国立大学の管理、国税や公金徴収、これはクレディセゾンという信販会社が手を挙げています。国家試験の実施も挙がっています。 こういった分野において、市場化テストとして、民間企業がやりたがっているわけです。このように見ていくと、政府・自治体業務のあらゆる領域に市場化の波が押し寄せていることが分かります。 【地方独立行政法人】 地方独立行政法人については、これまでいろいろと書いたり、学習会でもお話ししているので、簡単にしますが、自治体のある特定の分野を切り離して一つの独立した企業にしてしまうということです。 民間の会社で「会社分割制度」と言うのがあります。ちょっと古い話で恐縮ですが、富士銀行と第一勧業銀行と日本興業銀行の三つが合体してみずほ銀行が出来ました。こういうメガバンクの戦略は、いろんな側面があるのでしょうが、効率化・合理化という側面からいうと、統合会社のもとに、いろいろな銀行を再編していくわけです。そこには、企業取引が得意な支店、外国為替が得意な支店、証券取引が得意な支店、一般消費者向けのリーテイルが得意な支店など、いろんなのが混在しています。それを戦略的に統廃合・再配置するなどして、効率を高めていこうとするわけです。そこで、イメージ的にいうと、羊羹を切ってそれをつなぎ合わせる、あるいはダイヤブロックをばらしてまた組み立てるというような作業が必要になります。これを円滑にするための仕組みが、「会社分割」と「合併」ということになります。 それと似たような仕組みを行政にも採り入れたということになるわけですが、民間の会社分割ほど大がかりなものではなく、むしろ、それは市場原理にさらしていくために外部化するためのツールという性格でしょう。 このように、「市場化へのワンステップ」ではありますが、財源を政府自治体に依拠していることからも明らかなように、厳密な意味でのアウトソーシングではありません。しかし、そこでは職員の雇用、労働条件低下が問題となります。 どんな事業が対象かといいますと、試験研究機関、大学、地方公営企業(病院を含みます)、社会福祉事業、公共施設の設置・管理などです。 非常に範囲が広いわけですが、一つの独立した企業にする以上は、ある程度の規模がないと手間ばかり掛かって効率が悪いわけです。労働者が数百名働くような職場でないと、かえってコストばかりがかかりますので、実際に進行しているのは公立大学と病院です。 公立大学では、2004年4月に第一号として秋田県の「国際教養大学」がスタートしましたが、これはまったくの新設型でした。他方、今年(2005年)4月にスタートしたばかりの「首都大学東京」は移行型です。移行型なので、同時に教職員の雇用形態を勝手に変更することはできないのですが、当局は教職員の雇用形態の変更(任期制)、年俸制への移行等をねらっています。なお、この4月には、大阪府大、横浜市大なども独法に移行しました。2006年4月スタート予定とされている札幌市大は、高専、高看を廃止しての新設型ですが、ここでは元の学校の教職員の不採用問題が浮上しています。 ちなみに公立大学法人は、国立大学法人と同様に、一般型(民間型)しか選択できませんので、特定型(公務員型)に比べて、もともと市場化に近いといえます。株式会社による学校経営が解禁されれば、さらに激しい競争にさらされるおそれもあります。 公立病院では、大阪府が2006年4月から5病院を統合して一つの地方独立行政法人(特定型=公務員型)にするべく、準備を進めています。 先行して独法化した国立病院機構(特定型)では賃金職員の雇止めや正規職員の賃金引き下げ等が行われました。これについては、全医労が雇止めを理由とする損害賠償や移行・採用職員の差額賃金を請求する裁判闘争を行っていますが、大阪府も、国立病院機構並みの賃金引き下げをねらっています。 これが現在の地方独法をめぐる動きですが、スケールメリットが生かせるところが少ないのか、数は少なく、指定管理者のほうがやりやすいようです。 しかし、今後、自治体合併が進行した場合や、複数の自治体での共同設立、あるいは都道府県と市町村が共同して設立するという形態も可能ですから、いろいろな組み合わせが今後出てくることは、可能性としてはあり得ると考えておく必要があります。 【地方公営企業法全部適用】 次に「地公企法全部適用」は、主として公立病院で問題となります。 公立病院は、地方公営企業法が一部適用なので、職員は原則として一般職で働いています。ところが地方公益企業法を全部適用にすると、事業管理者が置かれて、職員も一般職から企業職員になってしまいます。ここでは、管理者の責任を明確化することによって、リストラなどをトップダウン方式でやっていく狙いがあるわけです。法的効果というよりは事実上の効果です。これは条例を変えることでできるわけです。 そして、これは、地方独立行政法人に移行する一つ手前の段階、あるいは指定管理者制度で民間企業に委ねてしまう一つ手前の段階と言うことができると思います。 全部適用のメリットとして推進側があげているのは、@目標管理(議会ではなく、評価委員会による)、Aディスクロージャー(情報公開)、B首長の経営責任の明確化、C単年度予算の弾力化、D業績評価制度などです。 全部適用をしても、あくまで自治体の範囲内であり、病院の職員の身分関係が水道局などの企業職員と同じになるだけですから、アウトソーシングというわけではありませんが、これもリストラの一つの道具として使われることに間違いはありませんし、市場化へのワンステップとして見ておく必要があります。
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