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急速に増える地方独立行政法人―Part2

photo2010年4月30日 
自治労連・地方自治問題研究機構 
角田英昭

[はじめに]

 最近、集中改革プランの徹底などで地方独立行政法人が急速に増えています。総務省の資料によれば、2010年4月1日付で20法人(病院10法人、試験研究機関1法人、社会福祉1法人、大学8法人)が設立されました。また、秋田県では全国で初めて社会福祉施設に制度が導入されました。
 改めて地方独立行政法人の実態と内容、課題を的確に把握し、対置要求・政策を鮮明にし、庁内・庁外の世論も啓発して、早急に運動を強めていくことが必要です。なお、独立行政法人の見直しは民主党政権の重点施策の1つであり、今後、どのような動きになるのか、見極めが必要です。

1.各分野別の設立状況

<公立病院では>

 独立行政法人化の動きは特に病院で顕著です。2009年4月28日に公表された総務省の「公立病院改革プラン策定状況」によれば、2009年3月31日現在、実施済みは6法人11病院、方針決定済みは16法人34病院、検討中は239病院となっていましたが、ここ1〜2年で急速に進み、2010年4月1日現在21法人、41病院と約4倍に増えています。その殆どが非公務員型です。当初、公務員型で出発した大阪府立病院機構でも、第1期の目標期間終了にあたり、次期以降は非公務員型が提起されています。
 2009年4月2日以降に設立された公立病院の地方独立行政法人は次の通りです。なお、同年4月1日以前の設立状況は、研究機構ホームページ(トピックス)2009年7月28日「急速に増える地方独立行政法人―Part1」(角田)を参照してください。試験研究機関、大学も同様です。               
    
(地)桑名市民病院(桑名市・2009年10月1日・ 非公務員型)
(地)神奈川県立病院機構(6病院・神奈川県・2010年4月1日・非公務員型)
(地)山梨県立病院機構(2病院・山梨県・2010年4月1日・公務員型)
(地)長野県立病院機構(5病院+2施設・長野県・2010年4月1日・非公務員型)
(地)岐阜県総合医療センター (岐阜県・2010年4月1日・非公務員型)
(地)岐阜県立多治見病院(岐阜県・2010年4月1日・非公務員型)
(地)岐阜県立下呂温泉病院(岐阜県・2010年4月1日・非公務員型)
(地)佐賀県立病院好生館(佐賀県・2010年4月1日・非公務員型)
(地)福岡市立病院機構(2病院・福岡市・2010年4月1日・非公務員型)
(地)さんむ医療センター(山武市・2010年4月1日・非公務員型)
(地)大牟田市立病院(大牟田市・2010年4月1日・非公務員型)

 今後も、2011年に山口県2病院、京都市2病院、浜松市1病院、2012年に泉佐野市1病院などで独立行政法人化が予定されており、内容の全体的な把握、分析、方針確立は緊急の課題です。 

<公設試験研究機関では>

 試験研究機関でも産業技術系を中心に独立行政法人化が推進され、この間、東京都、岩手県(2006年)、鳥取県(2007年)、大阪市(2008年)、青森県、山口県(2009年)で導入されました。2010年4月には北海道でも導入されましたが、その特徴は26ある道立試験研究機関のうち多分野にわたる22の機関を強引に組織統合し、(地)総合研究機構を設立して非公務員型でスタートしたことです。
 法人種別では、試験研究機関は病院とは異なり半数近くが公務員型でしたが、北海道のように非公務員型が増えることも予測されます。また、試験研究機関の場合は、将来の独立行政法人化を視野に入れ、スケールメリットを出すための統廃合を先行させることが多く、全国的な動きを注視していくことが必要です。 

<公立大学では>

 地方独立行政法人制度は公立大学への導入が先行し、2004年4月に全国で初めて国際教養大学(秋田県)が認可され、それ以降、全国で設立が相次ぎ、2010年4月現在31都道府県、10市、3一部組合・広域連合の51大学に拡大しています。今後、更に増えることが予測されます。
 2010年4月に設立された公立大学法人(すべて非公務員型)は、埼玉県立大学、山梨県立大学、静岡文化芸術大学(静岡県)、岐阜県立看護大学(2010年4月)、金沢美術工芸大学(金沢市)、広島市立大学、愛媛県立医療技術大学、名桜大学(沖縄県北部広域市町村圏事務組合)の8法人8校です。

<社会福祉施設では>

 全国で初めて秋田県が社会福祉施設に独立行政法人制度を導入しました。県当局は県立の小児療育センターと太平療育園を組織統合し、(地)県立療育機構を立ち上げ、4月から非公務員型で事業を実施しています。
          
2.独立行政法人化でどんなことが提起されているのか 

 それでは新たに設立された地方独立行政法人では、中期目標(設置団体作成)、中期計画(法人作成)の中でどんなことが提起されているのでしょうか。 
 まず、公立病院機構では、焦点となる「業務の改善及び効率化」や「財政内容の改善」では、これまでと殆ど同じで、職員の多様な採用形態、組織・人員配置の弾力化、病床利用率の向上、手術・検査件数の増加、高度医療機器の稼働率向上、事務・現業部門等の委託、業績及び能力評価制度の構築、人事・給与・人員配置等への反映、経常収支比率100%以上の達成などが明記されていま す。
 試験研究機関も同様で、北海道の(地)総合研究機構の中期目標では、研究の重点化、企業・大学・国等との緊密な連携、外部資金の積極的な活用、共同研究や研究成果、知的財産活用の数値目標化、予算や人員配置の弾力化、業績や貢献度を反映させる人事評価制度の導入、財政運営の効率化(運営交付金は毎年前年度比1%の縮減)などが徹底されています。 
 身分、賃金、労働条件等の問題では、「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法」に基づく法人への派遣期間は、法改正で最長10年とされましたが、東京都産業技術研究センターでは原則5年間とされ、神奈川県立病院機構では原則3年間とされるなど、法改正の趣旨がないがしろにされています。また、神奈川では医(3)「級別標準給料表」の改悪、調整額や手当の廃止、臨任職員の初任給格付け切り下げ等の攻撃もかけられましたが、粘り強い交渉で一定程度押し返しています。
 なお、今回、社会福祉施設に初めて独立行政法人制度が導入されましたが、秋田県の(地)県立療育機構の中期目標では「地方独立行政法人制度の特長を生かし、自己決定・自己責任のシステムにより業務運営の改善及び効率化」「収益性の向上、収入の確保、費用の節減に努め」、「運営費交付金の抑制に資する」と定められています。これで重症心身障害児・者等に対して「より安心で信頼される療育を提供する」ことができるのでしょうか。今後、施設運営、利用者処遇・サービスの検証と監視が必要です。

[最後に…]
 
 現在、病院や試験研究機関の独立行政法人化に反対し、直営堅持、公的役割の拡充を求める運動が各地で取り組まれています。 なぜ、直営で出来ないのか、公的な役割、責任をどう考えているのか、これまでどんな改善の努力を行ってきたのか、当局の責任を厳しく追及していくことが必要です。
 自治体当局の狙いは、集中改革プランの推進や財政健全化法の施行等を踏まえた「行革」推進、人員削減、経費節減であり、公的な役割の発揮や質・サービスの向上、人材育成は二の次、名目に過ぎません。これを利用者、住民に明らかにし、世論、議会にも訴えていくことが必要です。
 また、法人化された施設・機関が増えている中で、実際にその施設等の位置づけや運営、業務のあり方、組織、予算、賃金、労働条件などがどうなっているのか、その施設等の設置目的や本来的な役割が発揮されているのか、その検証作業と改善に向けた取り組みも重要です。
 法人種別問題でも、今は一般地方独立行政法人(非公務員型)が圧倒的に多くなっていますが、公務員型を選択した自治体もあります。山梨県の県立病院機構では、「県政モニターやタウンミーティングなど様々な方法で県民の声を聞き、こうした報告や意見を踏まえて総合的に検討した結果、県立病院の経営形態は『公務員型の特定地方独立行政法人が最も適当』との判断に至りました」と方針転換しています。その主な理由の1つとして「県立病院の職員が公務員である方が安心感が得られる」という県民の声に配慮したと説明しています。
 今後、こうした自治体当局の動きや方針、実態などを総合的に把握し、検証し、世論を喚起し、議会にも働きかけて具体的な改善を図っていくことが喫緊の課題です。



(掲載:2010/04/30)