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地域主権改革に係る一括法成立〜その概要と論点、取り組みの課題
地域主権改革に係る第1次・第2次一括法が成立
その概要と論点、今後の取り組みの課題
2011年9月 自治労連・研究機構 角田英昭
はじめに
いま、「この国のかたち、国と地方の政府のあり方を再構築する」として、地方分権、地域主権改革が急ピッチで進められています。今年4月28日には第1次一括法が成立し、第2次一括法も8月26日、政局絡みの国会の中でまともな議論、検証もされずに参議院本会議で可決、成立しました。
一括法の内容は、法令による義務付け・枠付け(以下「義務付け等」)の見直しと県から市町村への権限移譲です。同法の公布に伴い、各省庁は基準となる政省令の制定作業を進め、既に児童福祉施設や指定居宅サービス事業などでは、人員、施設及び運営に関する基準等が改正、公布されています。
自治体は、それらの基準省令を踏まえて「従うべき基準」「標準」「参酌すべき基準」(*)に沿って条例案を作成し、来年4月からの実施に向けて準備を始めています。その意味では、地域主権改革のステージは国から地方に移り、各自治体の姿勢、判断、方針の内実が問われます。
それは住民・利用者、自治体労働者にとっても重要な問題であり、行政内部だけの検討で拙速に進めさせず、利用者・住民、関係者との十分な協議、意見反映を保障させ、改悪をさせない、改善に繋げていける道筋をつけていくことが重要です。
早いところは12月議会に条例案の提出が予定されており、早急に自治体当局の方針、条例案の検討、対置要求(政策)の作成、世論喚起、自治体当局・議会への働きかけを強めていくことが必要です。ここでは具体的な事例も交えながら、その論点、課題、今後の取り組みの方向を検討したいと思います。
法令による義務付け・枠付けの見直しとは何か
政府・地方分権改革推進委員会は、「国が法令で事務の実施や方法を細かく規定して(縛って)いるから、自治体が地域の実情に合った最適な行政サービスの提供ができない」、だからそうした条項を廃止又は条例に委ね、自治体が国の基準省令を踏まえつつ自ら決められるようにする、それが司法権の分権であり、条例制定権の拡大に繋がると述べています。
条例制定権の拡大は、かつての公害防止対策・運動で成果を上げたように、活用如何では住民の暮らしや福祉、健康、環境を守り、充実に繋げていけるものであり、自治の発展に向けても重要なことです。
問題は今日の国や自治体の見直しの狙いです。端的に言えば、改善ということはあまり念頭になく、「地域の実情に合った」「自由度を拡大する」と言う名のもとに、最低基準の引き下げや要件緩和、人員削減、民営化の促進、国のナショナルミニマム保障における責任と財政負担の縮減が露骨に意図されています。実施に向けては、こうした点を十分に留意して取り組んでいくことが必要です。
義務付け等の見直しにどう取り組んでいくのか
まず、この問題では、憲法25条が保障する社会福祉・社会保障、公衆衛生などに係る最低基準や業務の質、専門性、安全性、機能等を担保する資格要件、技術的基準などは、国が法令で責任を持って定め、財源的にも担保すること、同時に各自治体が地域の特性や置かれている状況を踏まえて、条例で上乗せ、横だしなど改善、充実の措置が講じられるようにすること、それが基本です。
次に、今回の第1次、第2次一括法で提起された事項についてですが、その内容、分野は多岐にわたり、評価もさまざまで一律に論ずることはできません。個別、課題ごとの検討、対応が必要ですが、重点は、同法・施行令で義務付け等が削除されたもの、条例に委任され「標準」「参酌すべき基準」とされたものについて、内容を精査し、改悪を許さず、改善に向けた道筋をつけさせていくことです。主な課題は次の通りです。
なお、括弧内は条例の制定主体です。
@児童福祉施設の設備及び運営基準〜保育所の一部地域の面積基 準(標準)(県、指定都市、中核市)、保育所の屋外遊戯場面積な どその他の設備・運営基準(*)(参酌すべき基準)
(県、指定都市、児童相談所設置市、中核市(一部))
*「その他の設備・運営基準」とは、「従うべき基準」「標準」とさ れた「配置従業者・員数、居室面積、児童の適切利用・処遇、安 全確保、秘密保持」などを除くもの。
A児童自立支援施設の職員規定(施行令)廃止に伴う措置〜外部委 託化方針(各県と横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市)
B養護及び特別養護老人ホームの設備・運営基準〜養護老人ホー ムの入所定員(標準)、特別養護老人ホームの居室(入所)定員、 その他の設備・運営基準(参酌すべき基準)
(県と指定都市、中核市)
C介護福祉サービス事業の設備・運営基準〜各種サービス事業の 利用定員(標準)、その他の設備・運営基準(参酌すべき基準)
(県と市町村)
D障害福祉サービス、障害者支援施設の設備・運営基準〜障害福 祉サービスの利用定員(標準)、その他の設備・運営基準(参酌す べき基準)(県、指定都市、中核市)
E公共職業能力開発施設の実施基準〜訓練生の数(標準)、教科・ 訓練時間・設備、無料の訓練対象者、高度職業訓練の指導員資 格(参酌すべき基準)(県、市町村)
F食品衛生検査施設の職員配置基準(参酌すべき基準)
(県、指定都 市、中核市、保健所設置市、特別区)
G公営住宅の整備基準、入居すべき低額所得者の収入基準(参酌す べき基準)(県、市町村)
H準用河川の技術的基準、都道府県道・市町村道の技術的基準(一 部)(参酌すべき基準)(県、市町村)
I公共下水道の技術的基準、終末処理場・都市下水路の維持管理 基準(参酌すべき基準)(県、市町村)
J公民館、図書館、博物館の運営審議会・協議会の委員委嘱・任 命基準(参酌すべき基準)(県、市町村)
Kへき地学校の指定、へき地手当等の基準(参酌すべき基準)(県)
保育所は一部地域の面積基準が「標準」に〜基準引下げが可能に
保育所は、地方分権改革推進委員会の勧告では、保育士の配置数は「標準」、面積基準は「参酌すべき基準」とされました。しかし、保育の現場や関係者からは「(ナショナルミニマムとしての)最低基準は国が責任を持って法令で定めるべき」、リストラを最優先で進める自治体の裁量に委ねれば、今でも低い基準が「更に切り下げられ、保育の質、内容は守れない、地域格差が広がる」との批判、反対の声が上がり、厚生労働省も「最低限必要なものを定めることは国の責任」と主張し、最終的にはこれらは「従うべき基準」に変更されました。これは運動の成果です。
ところが政府は、地方団体からの強い要請(規制緩和)や待機児対策と称して、東京など一部地域の面積基準は「標準」とし、自治体が条例で国の基準以下に定めることを許容しました。これを受けて厚生労働省は9月2日に一部地域に関する省令を公布し、対象地域を告示しました。
その要件は、待機児童が多く(100人以上)、地価が高い地域(住宅地の公示価格の平均額が3大都市圏を上回る)で、対象地域は東京15区9市(立川、三鷹、府中、調布、小平、東村山、東久留米、多摩、西東京)、神奈川は5市(横浜、川崎、藤沢、茅ケ崎、大和)、埼玉は2市(さいたま、川口)と市川市、京都市、大阪市、西宮市です。自治体の数でみると少ないようですが、人口で見れば1500万人を超える地域が対象になっています。
条例は、認可権者である県、指定都市、中核市が制定しますが、上記の対象地域では、面積基準は各自治体が独自の判断に基づいて定め、それ以外は「従うべき基準」で条例を定めます。なお、特例市、一般市等は県の条例の適用となります。
省令が公布された今、基準引き下げを許さない取り組みが緊急に求められます。既に東京都は基準引き下げの検討をしており、他に波及する可能性もありますが、同時に現行水準を守ると表明している自治体もあり、この時期に「子ども・子育て新システム」の導入許すな!の運動と一体的に取り組んでいくことが重要です。
そもそも現行の最低基準は1948年に制定され、その水準は戦後の混乱期ということもあり、諸外国に比べて極めて低く、厚生大臣には省令で基準向上の義務が課されていました。しかし、面積基準はこれまでに1度も改善されていません。欧米並みに引き上げることこそ切実な課題であるのに、待機児が多い、地価が高い、時限付き(3年間)だからと言って、基準引き下げを認めるのは本末転倒です。
(例)0歳児1人当たりの保育室面積基準
日本3,3u、パリ5,5u、ストックホルム7,5u
職員日地基準 3歳児の場合の保育士と児童数の割合
日本 1:20 フランス 1:8 アメリカ 1:7
ニュージランド 1:6
なお、全国知事会は、昨年11月に「一括法で駄目なら構造改革特区で」と知事が連名で保育所の設置・運営に係る基準など23件30項目の規制緩和を国に申請しました。これはこの間の経緯、現場を無視した暴挙です。この8月に政府側の最終回答が示されましたが、当然のことながらそこでは保育に関しては「特区での対応は不可」と回答されています。
児童自立支援施設の外部委託が可能に、直営堅持が緊急の課題
近年、児童虐待、いじめ、不登校、非行、少年事件など子どもの問題が深刻化する中で、児童自立支援施設は主に少年非行に対応する専門施設として各県に設置されています。
厚生労働省の研究会報告(2006年)は、@同施設には家庭裁判所の保護処分により入所してくる子どもや自傷・他害を伴う行動障害を有する子どもなども入所しており、安定した集団生活を維持・確保するためには極めて高い専門性が要求される、A非行少年に対する公の責任の観点、施設運営の安定性・継続性の観点、退所後のケア、学校教育の円滑な導入、他の福祉施策や関係機関との連携などの観点から、地方公共団体の公設公営原則を堅持することが必要であると指摘しています。
ところが知事会は、「都道府県は、児童自立支援施設の必置、その施設長、児童自立支援専門員は都道府県の職員を充てることとする義務付けがあることから、…当該施設の外部委託が不可能になっている。効率的な行政運営が可能となるよう職員の身分規定を廃止すべきである」と主張し、規定の削除を要求してきました。政府もこれを認め、一括法が通る前に施行令から職員規定を削除、今年4月1日に通知しました。
これにより現在は児童自立支援施設の外部委託が可能となっていますが、このような児童の専門施設、しかも各県1ヶ所程度の公立施設をなぜ責任持って直営で運営しようとしないのか、知事会の見識が疑われます。これは県の責任、役割を放棄するものです。
しかし、実際に外部委託するかどうかは各県の判断であり、施設の性格上、外部委託はそう簡単ではありませんが、これは知事会が要求しており、予断を許しません。運動を強め、民営化を許さず、直営堅持、機能拡充に向けた取り組みが必要です。
このように義務付け等の見直しは、推進側の大義名分とは大分異なり、実際には基準引き下げ、外部委託化などに連動しています。こうしたものに対しては、それを実施(導入)させない運動が緊急に必要です。また、「参酌すべき基準」についても、一括法が通った今、問題点の指摘だけではなく、その内容と自治体当局の評価、判断、方針を早急に明らかにさせ、それが住民・利用者、職務・職場にどのような影響をもたらすのか、それを検証し、必要な歯止めと改善に向けた対案の提示、各地で先進例をつくる取り組みが必要です。
既に自治労連本部・地方組織でも取り組みが始まっており、都道府県職部会と研究機構でも権限移譲問題と合わせ義務付け等の見直しで自治体当局へのヒアリングシートを作成し、調査、分析、対処方針の検討を進めています。道路や河川などでは国公労連等との連携も必要です。その内容については別途報告がされると思いますが、ここでも適宜情報提供をしていきます。
なお、この問題は法的な解釈、対応を含めてわかりづらい点が多々あり、運動を進めていく上では、利用者・住民の目線でわかりやしく職場、地域に伝えていく工夫と努力が求められます。
都道府県から市町村への権限移譲
県から市町村への権限移譲については、義務付け等の見直し(第2次分)と合わせて第2次一括法案に盛り込まれ、4月に国会に提出されました。審議は大幅に遅れて8月上旬に始まり、実質的な議論は殆どされないまま8月26日に成立、30日に公布されました。多くは2012年4月から施行されます。既に各県では移行に向けた準備、具体化が進められています。
この権限移譲について、地方分権改革推進委員会は「先の第1次地方分権改革においては地方6団体の総意形成の調整を重んじたために不十分に終わった」と総括し、「第1次地方分権改革の成果の1つとして新たに創設された都道府県事務処理特例条例による市町村への権限移譲の実績を評価し、これを普遍化する」として推進を図ってきました。
第1次勧告(2008年5月)では、県から市町村に64法律359の事務権限の移譲が提言されましたが、その後の各省庁との協議、調整の中で、最終的には47法律に絞られ、それが第2次一括法案の中身になっています。
既に事務処理特例に基づいて移譲されている事務も多く、今回はそれを「普遍化する」として市町村に一括で法定移譲するものです。
*第1次分権改革で地方自治法の「市町村への事務委任」規定が削除され、「条例を制定して市町村長に処理をさせることができる」に改正されました。これが「条例による事務処理特例制度」で、各県はこれに基づいて条例をつくり、既に市町村に多くの事務を移譲しています。
この制度で移譲されている事務は、適用法律で201、件数は都道府県全体で1859件(2008年4月現在)にもなります。この場合、県は地方財政法で事務執行に要する経費(移譲事務交付金)を措置しなければならないとされていますが、今回の一括法は法定移譲であり、経費は市町村の負担になります。
権限移譲ではどんなことが提起され、どう取り組んでいくのか
移譲事務の中身は、義務付け等の見直しと同様、膨大かつ多分野に亘っており、ここで紹介することはできませんので、ぜひ内閣府の資料(ホームページ)を参照してください。
さて、ここでは第2次一括法が成立したもとで、今後、どんなことに留意して取り組んでいくべきなのか。また、今回の権限移譲は第1弾であり、今後も続くことから、その点も加味して検討していきたいと思います。
まず、実際には多くの事務が事務処理特例で既に市町村に移譲されており、その実態を的確に把握し、メリット・ディメリット、問題点、課題を明らかにしていくことです。このことでは自治労連都道府県職部会の検証作業が参考になります。
その上で、移譲対象事務の性格、内容、市町村の対応能力、財源、実施体制などを勘案し、法定移譲でどうなるのかを明らかにし、移譲後の実施に支障がないよう県及び市町村に必要な手立てをとらせていくことが課題になります。
また、今後も権限移譲が進む中で、今回のような一律的な法定移譲がいいのか、それとも権限、事務の内容によっては事務処理特例制度の方がいいのか、本来県がもっと主体的に担うべきなのか、更には市町村側の実施体制、人材育成、県や周辺市町村との補完、支援、連携の仕組みをどう構築していくのか、こうした観点からの検討も必要です。何より大事なことは、それが住民の暮らし、福祉の向上、自治の発展に繋がるかです。
権限移譲の“先進県”と言われる広島県では
ここで静岡県と並んで権限移譲の先進県と言われる広島県の状況を検討してみたいと思います。同県は2005年以降、分権改革推進計画(2005〜09年)に基づき81項目、189の事務・権限について、基礎自治体への移譲に取り組んできました。
2010年度の進捗状況は、全市町延数で移譲対象事務数2466のうち移譲事務数は1808で進捗率は73,9%です。それに伴う財政措置は、県で実施する場合の経費を基に積算し、2010年度は移譲事務交付金として13億円(当初予算額)を交付しています。
主な移譲事務は、町による福祉事務所の設置(県内9町のうち8町)、身体障害者手帳の交付(県内21市町のうち19市町)、浄化槽設置の届出受付等、農地転用の許可等、旅券の申請受理・交付(全市町)、港湾の管理権限(東広島市に移管、全国初)などです。
この結果について広島県は次のように総括しています。(広島県庁ホームページから)
<移譲を受けた市町からみたメリット>
@申請から許認可までの処理時間の短縮、事務の簡素化による申 請者の負担軽減、既存の市町事務との一体的処理が図られた。A事務処理のノウハウが市町に蓄積され、地域の実情を反映した きめ細かい事務処理が可能になった。
B窓口が身近になり、対応の迅速化が図られた。
<移譲を受けた市町が挙げている課題>
@担当者の経験・習熟不足がある。
A専門職員の確保が難しいなど。
市町村側はどう受け止めているのか
同県三原市の五藤市長は、2009年10月の県議会「地方分権改革推進特別委員会」で、次のように意見陳述しています。「対象となる164件の内、法的な問題などで受け入れ難い47件を除いた117件について、県と十分協議した上で、2006年から08年までの3年間で101件を受け入れた。これらを担当課で『率直にフォローした』ところ、約2割の事業で住民サービスが向上した。
一方、約1割の事業でサービスが低下した」(自治日報・2009年10月30日)。具体的な中身は次の通りです。
<住民サービスが向上した分野>
@認定期間の短縮
〜身体障害者手帳交付は60日間が15日間に、鳥獣捕獲等許可は5 日間が2日間に短縮した
A迅速化と情報収集の充実〜未熟児訪問指導など
B地元と一体的な経済振興
C業者の監視体制の強化〜日本農林規格(JAS)法に係る立ち入り検 査、宅地造成など開発行為の許可など
D利便性の向上〜パスポート交付
<住民サービスが低下した分野>
@県道の維持・修繕〜予算の関係などもあり除草回数が減った。
A習熟度・人手不足〜旅館・公衆浴場・理容院の申請受理や立ち 入り、障害福祉サービス事業者の指定受付や立ち入り、被爆者 の健診や指導、広告物の表示・設置調査など。
上記のことから、@法的な問題も含めて県からの事務移譲になじまないものがかなり存在する、その的確な分類が必要になる、Aサービスが向上した事業は、処理期間の短縮、迅速性、利便性など事務処理に係るもの、地元との一体的な運用などが期待できる分野に多い、Bサービスが低下した事業は、予算、職員の確保、習熟度(技術的な蓄積)などが求められる分野に多いと言えます。そのため広島県も「必要に応じてフォローアップに努めていきたい」と述べています。
その意味では、事業の執行体制や専門性(質)など内容に係るところで不十分さが指摘されており、それをどう克服していくのかが課題になります。周辺自治体との連携、共同対応、県からの人材派遣や技術的な支援などが考えられますが、事業、地域によっては、県が直接担った方がいいものもあると考えられます。実態を踏まえた検証が必要です。
都市計画決定やまちづくりの分野ではどうか
第2次一括法では、関与の縮減という視点も含め、国土交通省関連の権限の多くが県から市に移譲されました。それは今回の権限移譲の重点です。
具体的には、区域区分、都市再開発方針等に関する都市計画決定(指定都市へ)、緑地保全地域・市街地開発事業などに係る都市計画決定(市町村へ)、都市計画施設区域内や市街地再開発促進区域内等の建築許可、住宅街区整備事業施行地区内等の建築行為等の許可(市まで)など、かなりの数になります。
これら個別事業ごとの調査、分析、評価は、研究機構でも行っていますが、「都市計画決定やまちづくりなどの権限は住民に近い自治体に移すべき」というのが基本です。同時に、この問題はそれだけでは十分とは言えず、他の制度的な仕組みも含めて総合的な対応が必要です。
見上崇洋氏(立命館大学教授)は、市町村への権限移譲は是としながらも「それだけでは一部の問題への対処に過ぎない。現行法が自治体による責任を貫徹できる形、あるいは自治体のまちづくり権を全うできるシステムを準備しているのか。勧告の基本的な考え方が制度化されているのか。この点ははなはだ心許ない状態であって、今回の方針による権限移譲、同意・協議という介入手法をやめるだけでは、国の責任放棄にしかならない可能性がある」(2009年2月地方分権研究会)と指摘しています。
実際に都市間競争が激しさを増す中で、地域では開発に期待をかける首長や企業・地権者の開発要求が強まり、それが権限移譲(拡大)、規制緩和、関与の縮減と結びついていることは、まぎれもない事実です。下に行けばいく程、行政と地権者、事業者との関係が近くなり、癒着や不正も懸念されています。
その意味では、施行にあたっては権限移譲だけでなく、都市計画策定やまちづくりへの実効ある住民参加、必要な規制、指導も含むチェックシステム、技術的な支援体制の確立などが不可欠であると思います。
今後の取り組みの課題では
以上のことを踏まえ、当面、どのような取り組みが必要なのかを考えてみたいと思います。
1つ目は、既に移譲されている事務も含め、県及び市町村、関係者への調査、分析を早急に行い、予測される懸念、問題点を明らかにし、必要な手立て、課題の克服、方策を確立していくことです。実施に向けては1年の経過措置期間(一部)もあり、十分協議、検討すべきです。
2つ目は財政問題です。今回は法定移譲ですから経費は市町村負担となります。内閣府によれば多くは事務費であり一般財源対応です。交付団体は交付税で措置されますが(基準財政需要額に含まれる)、それで必要額が確保されるのか。不交付団体は全額市町村負担になるが、それで支障なく事務が実施できるのか。こうしたことを明らかにしていくことが重要です。
3つ目は事務事業の執行体制です。事務量増に見合う人員増は当然ですが、それがどこまで担保されるのか。市町村はこれまでも権限移譲で人は増えない、忙しくなるだけと懐疑的です。今後は更に専門的な対応も要求されます。責任ある執行体制の確立が求められます。
4つ目は、権限移譲に伴う県のフォローアップです。これは事務処理特例制度の中では必要に応じて実施されていますが、法定移譲の場合はどうなるのか。市町村への補完、支援は県の本来的な役割であり、特に専門分野などは要請があれば人的派遣も含め積極的に対応すべきです。
5つ目は、今後、保健所や児童相談所の設置市の見直し(拡大)、共同設置も検討課題になってきますが、専門性の高い施設・事業は、本来どこが担った方がより効果的、効率的なのか。県が担うということも重要な選択肢の1つとして総合的に検討すべきです。
6つ目は、民間委託の問題です。「国から地方へ、県から市町村へ」と言う流れは、そこで終わらず「官から民へ」に連動しています。民間事業者も新たなビジネスチャンスと捉え参入を検討しています。ここに明確な歯止めをかけなければ何のための権限移譲かわからなくなります。
さて、最後になりますが、地方分権、地域主権の取り組みは両刃の剣です。そこには前述したように最低基準の引き下げや要件緩和、行政の民間化、国の責任と財政負担の縮減などが明確に意図されています。
同時に活用如何では住民の暮らし、福祉、地域経済、自治の発展に繋げていくことができます。その意味では、いま私たちの力、運動が試されています。職場、地域、議会に自治の力を培い、現状を発展的に切り拓いていく力量が求められています。今回の取り組みはその重要な第1歩であると考えています。
(掲載:2011/09/27)
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